気ままに英語あそび

「なぜこういう英語表現になるの?」納得するまで気ままに考えたい! 効率重視の時代に逆行する英語学習ブログ

【なるほど英語#29】I gave Ann some candy.とI gave some candy to Ann.の違いに学ぶ「情報構造」

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どうも、ねこらいたーです(= ̄ω ̄=)

 

今回は英語の「情報構造」についてのお話。例によってかなり長いです。

 

ただ、この「情報構造」はキソ的ながら結構重要な考え方なので、初めて聞いたという方は、最初の項目で基本的な考え方をご紹介してありますので、ここだけでも押さえることをオススメします。

 

では、始めていきますね。

 

 

 

情報構造って?

突然ですが、次の二文の違いに関してすぐに説明できますか?

 

a)I gave Ann some candy.

b)I gave some candy to Ann.

 

この違いを考えるのに必要なのが「情報構造」と一般に呼ばれる考え方です。

  

実はコレ、【なるほど英語#2 】でも少し触れています。該当部分を以下に抜き出してみますね。

 

 入れ替え可能型の場合、目的語と方位詞を入れ替えるとニュアンスが異なるので注意が必要です。これがなぜ起こるかといえば、英語の大きな特徴として、旧情報はなるべく前方に置き、新情報はなるべく後方に置くという性質があるからです。

 

例えば、 Tom put the coat on.とTom put on the coat.を比べてみましょう。

 

前者ではthe coatは旧情報で、onが新情報となります。つまり、これは"What did Tom do with the coat?"(「トムはその上着をどうしましたか?」)という疑問文に対応する答えとなるのです。

 

一方、後者ではonが旧情報で、the coatが新情報となります。つまり、これは"What did Tom put on?"(「トムは何を着たの?」)という疑問文に対する答えとなります。

 ※この引用箇所では両者は訳すとどちらも「トムはそのコートを着た」となってしまうので「ニュアンスが異なる」と書いてありますが、実際には両者の英文が指し示す情報の質が違うので「意味が異なる」と言った方が正確でしょう。

 

 

 最初の段落の二文目に、

 

旧情報はなるべく前方に置き、新情報はなるべく後方に置く

 

 とありますが、このように情報の新旧を基準に並べられている構造情報構造」といいます。

 

また、旧情報というのは、

 

聞き手がそれまでの話や文脈から既に知っている情報(だと話者が判断したもの)

 

のことで、新情報というのは、

 

聞き手がまだ知らない情報(だと話し手が判断したもの)あるいは話し手が強調したい情報

 

のことです。

 

旧情報・新情報という用語が分かりにくければ「既知情報」「未知情報」と言い換えてもOKだと思います。

 

さて、この観点を押さえたうえで先ほどのa)とb)を考えてみましょう。

 

a) I gave Ann some candy.

b) I gave some candy to Ann.

 

これらを情報構造の観点から見ると、a)の"Ann"とb)の"some candy"が 旧情報になり、新情報にはa)の"some candy"とb)の"Ann"が該当します。

 

この違いを踏まえて訳すと

 

a)「私がアンにあげたのは甘いお菓子だった」

b)「私が甘いお菓子をあげたのはアンだった」

 

となります。

 

これはもう、ニュアンスの違いというよりも意味が違うと考えた方が適切ですよね。

 

ここまでが「情報構造」のキホンとなります。

 

 

新情報がいつも最後にあるとは限らない

さっそく上述の説明と矛盾しているように見える見出しですが(笑)、さきほどの「旧情報はなるべく前方に置き、新情報はなるべく後方に置く」というのはあくまで「なるべく」であって、語順の変更が不可能な場合には新情報が旧情報よりも前にくることがあります。

 

例えば、

 

c)I gave a stuffed dog to her.

「犬のぬいぐるみを彼女にあげました」

 

という文。念のため断っておきますと、これは非文ではありません。

 

この例文c)では、不定冠詞「a」がついていることから分かるようにa stuffed dog新情報であり、また代名詞であることから分かるようにher旧情報となっています

 

これは、一体どういうことなのでしょうか。

 

実はこれには秘密があります。

 

先ほど出てきた例文b)では、

 

b)I gave some candy to Ann.

 

というように、some candy旧情報、 Ann新情報とご紹介しました。

 

しかしながら、例文b)は次のようにsome candy新情報、 Ann旧情報と解釈することも可能なんです。つまり、解釈的にあいまいな文ということになりますね。

 

b’)I gave some candy to Ann.

 

そして、この解釈こそが例文c)だったわけです。

 

以上をまとめますと、

 

"give...to~"というパターンの文は「give+物+to+人」という形しかとれないため、新情報であっても旧情報の前に置くしかない

 

ということになります。

 

このように、新情報が文末以外にくる例はほかにも沢山あります。例えば以下の例文では新情報旧情報です

 

例1)

(Who broke the vase?と訊かれて)John did.

「(『誰が花瓶を割ったの?』と訊かれて)ジョンがやりました」

 

例2)

The man robbed Tom of it.

「その男は、トムからそれを奪った」 

 

例3)

James denied  food to them.

「ジェームズは彼らに食べ物を与えなかった」

 

 

語順の入れ替え可能な場合って?

さきほど、『語順の変更が不可能な場合には新情報が旧情報よりも前にくることがあります』と書きましたが、

 

「じゃあ、語順の変更が可能な場合ってどういう場合?」

 

という疑問が出てくると思いますので、ここでご紹介しておきたいと思います。 

 

と、その前に確認しておきたいことが1つ。今回の記事で何回も登場している「give+物+to+人」というパターンですが、文型的には、これはSVOの第3文型に修飾語Mがくっ付いたものになりますので、この点は注意してください。

 

以下の例では、これと良く似たパターンを取りながら、前置詞を別のものに変えることで語順の変更が可能なものを挙げてあります(旧情報新情報)。2つずつでセットになっているので、見比べてみてください。

 

d)Ann presented her fomer high school with a lot of endowments.

「アンは自分の母校の高校に多額の寄付をした」

 

d')Ann presented a lot of endowments to her fomer high school.

「アンが多額の寄付をしたのは、自分の母校の高校だった」

 

 

e)He furnished Tom and Jeff with food and water.

「彼はトムとジェフに水と食糧を与えた」

 

e')He furnished food and water to Tom and Jeff.

「彼が水と食糧を与えたのはトムとジェフだった」

 

 

f)We provide children with a playroom.

 「当店では子供向けに遊戯室を提供しております」

 

f')We provide a playroom for children

 「当店で提供している遊戯室は子供向けとなっております。」

 

これらの動詞においての前置詞の使い分けも、何を新情報と見なすかによって左右されていると考えられます。

 

ほかに、この記事の冒頭で出てきた、入れ替え可能型の句動詞でついても同じことが言えますね。

 

g)Tom put the coat on.

「トムはその上着を着た」

 

g')Tom put on the coat.

「トムが着たのはその上着だ」

 

 h)Tom put it on.

「トムはそれを着た」

※Tom put on itは不可

 

 

代名詞は常に旧情報?

 代名詞は一般に、話し手と聞き手との間でどれを指しているか分かるものに対して用いられるといった説明がされます。ということは、代名詞は情報としては旧情報になるはずだということになりますよね。

 

では、次のような問題はどうでしょうか。

 

問.以下の各英文の正誤を言ってみてください(答えは少し下にあります)。

1)I gave her it.

2)I gave her that.

3)I gave her this.

 

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正解は・・・

 

1)、2)、3)

 

です。

 

過去記事を見ると誤字が結構ある私ですがこれは誤字ではありません

 

皆さん、今、↓のようになっていませんか?

 

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「こりゃ、参ったぜ」的なネコ

 

少なくとも、私ねこらいたーが初めてこの文を見たときは↑のようになっていました(笑)

 

 

さて、話を戻します。

 

一般的な代名詞の説明に従えば、代名詞は旧情報になるはずなので、さきの各問題の後半の2単語は全て旧情報になってしまい、したがって、文としては誤り(=非文)になるはずですよね。

 

1)I gave her it.

2)I gave her that.

3)I gave her this.

 

ここまで読んで下さった方にとっては1)は問題ないでしょうが、困るのは2)と3)です。

 

この現象の謎を解くあたってヒントが1つあります。

 

それは、

 

give something to somebodyとgive somebbody somethingとの真の関係

 

についてです。

 

少し前の説明で”I gave a stuffed dog to her.”という「新情報が旧情報よりも前に位置している」パターンを見ました。そして、こうなる理由として、

 

"give...to~"というパターンの文は「give+物+to+人」という形しかとれないため、新情報であっても旧情報の前に置くしかない

 

という説明をご紹介したと思います。

 

ところが、です。

 

歴史的に見ると、新情報を旧情報の前に置くしかないのはやはり不便だという意識が人々の中で働いたせいなのか、

 

I gave a stuffed dog to her.

 

というパターンから

 

I gave her a stuffed dog.

 

というパターンが発生したようなのです。

 

そうなんです。

 

SVOOという第4文型はSVOMという第3文型に修飾語Mがついたパターンから派生した文型だったんです。

 

「ホントなの?」と疑問を持たれる方もいるでしょうが、この説は私が考えたものではありませんし、ネット上でも同じような見解を持っている方々が見受けられます。

 

信頼できる根拠を1つ示すならば、例えば、久野暲・高見健一『謎解きの英文法 文の意味』(くろしお出版)に次のような記述があります。

 

・・・(略)・・・to/for~を用いた構文と二重目的語構文では、前者が基本形で、後者は、話し手がその基本形を情報の流れに合わせるために、意図的に語順を配列し直した構文である・・・(略)・・・

 

 この引用の中の『二重目的語構文』というのがいわゆる第4文型のことですね。

 

第4文型はSVOMから派生したことを示す状況証拠は、他にもあります。少し前の説明にてprovide...with~やpresent...with~が出てきましたが、これらのwithはアメリカ英語では省略されることがあります。つまり、

 

Ann presented her fomer high school with a lot of endowments.

 

の意味で

 

Ann presented her fomer high school  a lot of endowments.

 

となるパターンが存在しているんです。

 

これらは、第3文型から第4文型への過渡期にある動詞だといえるでしょう。他にも同様な省略がされる動詞はあると思いますので、探してみてはいかがでしょうか。

 

さて、ここまでをまとめますと、「give+物+to+人」というパターンでは新情報を文末に置くことができない場合があり、それを解消するために第4文型が生まれたということになります。つまり、第4文型の意義は文末に新情報を配置するという点にこそあるわけです。

 

こういった歴史的な経緯を考えると、さきの「I gave her that.」と「I gave her this.」の文末にある代名詞thatとthisには、やはり新情報の要素があると考えるしかありません

 

では、この場合の新情報の要素とは何かというと、「これではなく、あれ」「あれではなく、これ」「君の持っているものではなくて、これ」「彼の着ているものではなくて、あれ」といった強い指示性でしょう。

 

つまり、先の問題2)と3)は例えば、

 

2)I gave her that, not this.

3)I gave her this, not that.

 

のように書いたのとほぼ同じと考えれば良さそうです。

 

ところで、thatとthisは、文脈上一回も出てきていないような完全な新情報を指すこともできます。ですので、聞き手の目の前にぬいぐるみをいきなり持ってきて、そのぬいぐるみを指さししながら「彼女にこれプレゼントしたんだよ」と言うこともできるわけです。

 

こういった性質を踏まえると、

 

「2)や3)が正しい文なのは、このようにthatとthisが完全な新情報を指すというだけではないのか」

 

という疑問も湧きますが、理由はそれだけではありません。

 

というのは、文脈上一度言及したものがいくつもあって、itというだけではどれのことを言っているのか分からないという場合には、thisやthatを使って他のものと区別する必要があるからです。

 

つまり、こういうときのthisやthatが指しているのは一度言及したものであるという点では旧情報であるといえるのですが、同時に「あれじゃなくてこれ」「これじゃなくてあれ」という要素が加わって、いわば「部分的新情報をもつ旧情報」とでも呼べるようなものになっているといえます。

.

 一方で、itにはこのような「対称性」を表すことはできないので、「部分的新情報をもつ旧情報」になることはできず、単なる「旧情報」のままです。これが、1)は誤りである理由です。

 

以上が、英文2)と3)が正しいと言える理由です。

 

ちなみにですが、上記の英文2)・3)と同じ理由で、以下のような目的語の入れ替えが可能な句動詞においても、thisやthatは文末に置くことが可能です。ここでもまた、代名詞itを文末に用いた文は絶対に容認されない点をもう一度確認してみてください。

 

Tom put on this. OK

Tom put on that. OK

Tom put on it.   不可

 

まとめ

1.英語は基本的に「旧情報+新情報」という構造になる。これを情報構造という

 

2.旧情報というのは、聞き手がそれまでの話や文脈から既に知っている情報のこと

 

3.新情報というのは、聞き手がまだ知らない情報あるいは話し手が強調したい情報のこと

 

4.「it」は旧情報にしかなれない

 

5.「this」と「that」は、一般的には旧情報と新情報のどちらも指せると説明されるが、実際には「あれではなくて、これ」といった対称性が含まれており、新情報の要素が少ないながらも常にあるといえる。つまり、「新情報よりの旧情報」あるいは「部分的新情報をもつ旧情報」という方が正確だと考えられる。

 

6.以上のことを踏まえて情報の新旧性について図示するならば、

 

a+名詞 >the+名詞 >this・that など >it以外の人称代名詞 > it

 

 というように、左に行けばいくほど新情報になりやすくなり、反対に右に行けばいくほど旧情報になりやすくなる

 

 

 

 

 

 

 

最後まで読んで下さった方、ありがとうございます!

 

思ったよりも第4文型は奥が深いですね。この辺りの事情に関しての説明はあまり見かけないので後半の内容に熱が入ってだいぶ細かくなってしまいました・・・。

 

ライティングなどにおいては、前半に書いてあるような事項をおさえておけば大丈夫かと思います。

 

では、また。

 

 

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