どーも、ねこらいたーです (= ̄ω ̄=)
今回は語順についての小話。
日本語の語順って特殊?
英語学習をやっていると、日本語とは語順が真逆なところがあって分かりづらいなぁと思ったことが少なからずありますよね。このような違いは、「日本語と英語の語順はまるで鏡」といった比喩表現で例えられることもあるくらいです。
ところで、最近は海外の方でも日本語に関心を持って学んでいる人が一層増えていますが、「ニホンゴはむずかしい」という感想をよく聞く気がします。
こういう話を聞くと日本人としては少し嬉しい(?)ような気もするのですが、その半面で「妙な感覚」に囚われている気もするのです。
どういうことかといいますと、こういった「ニホンゴ=難しい」という類の話を何度も聞いていると、あたかも日本語の語順が特殊で英語の語順の方が主流なんだという気がしてきませんか?
果たして本当にそうなのでしょうか?
というわけで、調べてみると次のような興味深いデータがあります。
一般に世界の言語でもっとも普通の文型はSOVでこれにSVOがつづく。63言語における分布は次の通り。
SVO 32% 英語, フランス語, スペイン語
VOS 4% タガログ語
(出典:中尾俊夫・寺島廸子『図説 英語史入門』 大修館書店)
この結果は結構意外でした。特殊でないどころか日本語と同じSOV型が一番多いんですね!したがって、先ほどの「日本語の語順が特殊で英語の語順の方が主流」というのは錯覚だったということになります。
ただあくまでこの数字は63言語の中での結果。おそらく調査対象は名が知れているメジャーな言語を中心に行ったのでしょうが、世界の言語の総数は5000とも8000とも言われていますから、マイナーな言語を含めたらまた違う結果になるかもしれませんね。
SOVの英語が存在した?
日本語の語順の話が出たついでに、このことについても軽くご紹介しておこうと思います。
英語はSVOの語順が常識のようになっていますが、歴史的に見ると日本語と同じSOVの語順を取っていた時期があるんです。
いつごろの話かというと、【えーご雑学#2】で触れた古英語の時代(5世紀~11世紀中頃)です。
この時期の英語はまだ出来立てで明確にコレが正しいといった語順が完全には確立されていなかったようで上述のタヒチ語と同じVSO型の文も存在していました。では何でもありだったのかというとそうではなく、このころには既にSVO・SVC型の文が主流だったとされています。
しかしそんな中でも、that節・if節のような従属節あるいは関係詞節では、SOV・SCVの語順が原則的に取られていたんです。次がその例。
ġif sē blinda ðone blindan lǣt
if the blind the blind leads
(=if the blind leads the blind)
(出典:中尾俊夫・寺島廸子『図説 英語史入門』 大修館書店)
現代英語に対応する単語が古英語のすぐ下に書いてありますが、このif節ではleadsに該当する動詞が節の最後になっています。
と、ここで気づかれた方もいると思いますが、このように従属節で動詞を一番後ろに置くというのは現代ドイツ語と全く同じ構造なんです(下の例文参照)。
Ich denke, dass es notwendig ist.
(=I think that it is necessary.)
「それは必要だと思います。」
対応する語を色分けしてありますが、この例文では英語でいうthat節の動詞"ist"が最後にありますね。
これは偶然の一致ではありません。というのは【えーご雑学#2】でも触れたように英語は元々はゲルマン語(つまりドイツ語)の中の一方言だったという歴史があるからです。
しかし残念なことに、こういった特徴も中英語時代(11世紀~15世紀)になると消え、従属節内の語順も現代英語のようなSVO・SVCに統一されていったようです。
さて、いかがでしたか?
結局、日本語の語順というのは珍しくも何ともないということが判明しましたね。おそらくですが、海外の日本語学習者がムズカシイと感じるのは語順よりもオノマトペなどの表現レベルの話なのでしょう。
あとは、日本語の「私」を指す表現が、俺・僕・私(わたし)・私(わたくし)のように沢山あって何をいつ使えばいいのか困るなんていう話も聞いたことあります。
英語学習に疲れたら、たまには全く別の言語に触れてみると新たな発見があったりして、再びやる気が出るかもしれませんよ!
では、また。
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