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「~に到着する」だけじゃない! ”get to~”を徹底解説!【句動詞表現#63】

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皆さん、こんばんは。ねこらいたーです(= ̄ω ̄=)

 

今回は久々の句動詞解説です。テーマは皆さんご存知の”get to~”について。

 

カンタンな印象が強いこの”get to~”ですが、実は「~に到着する」以外にもよく使われている表現がいくつかあります。今回はそれらを含めて徹底解説していきます!

 

では本編へどうぞ。 

 

 

 

始めに~用語についての注意~

初めての方向けの注意事項です。過去の句動詞解説記事をご覧になったことがある方は、お手数ですが上の目次から各用例の解説に飛んでください。

 

方位詞とは?

当ブログでは「方位詞」という用語が出てきます。これは、句動詞で使われる方向・空間を表す前置詞と副詞(例:up, off, down, forなど)をまとめて指す言葉です。より一般的には、「不変化詞」「パーティクル」「空間詞」などとも言いますが、これらとほぼ同じものと考えてください。

 

このような呼び方をするのは、句動詞で使われる前置詞あるいは副詞にはその両方の用法を持つものが多く、「これは前置詞だから〇〇」「これは副詞だから△△」というように区別して考えることにあまり利点がないからです。

 

具体的にどういう前置詞・副詞が句動詞で使われるのかについては、以下の記事で詳しくまとめてあります。よければ参照ください。

 

eigogakushu.hatenablog.jp

 

句動詞の目的語位置について

このブログでは、句動詞を紹介するときに、その目的語の位置を次のようにパターン化してご紹介しています。なお、この分類は基本的にOxford Phrasal Verbs Dictionaryに従って作成したものです。

 

①:割り込み型

動詞と方位詞を必ず離してその間に目的語を割り込ませるパターン。目的語と方位詞の位置を入れ替えることは普通しません。数としては少数派です。なお、これには例2のように目的語を2つとるものも含みます。

 

例1)see John in 「ジョンを中まで案内する[見送る]」

例2)get the bookshelf down the stairs 「本棚を階段から降ろす」

 

②:後置型

いわゆる「自動詞+前置詞」のパターン必ず方位詞の直後に目的語を置きます

 

例1)get up a ladder 「ハシゴを登る」

例2)get up to London「ロンドンに行く」

 

③:後置型

方位詞の直後に目的語を置くのが普通なパターン。パターン②ほど目的語の位置は絶対的ではないので「”後置型」としてあります。

 

例)put on weight 「体重が増える」

 

④:入れ替え可能型

文字通り方位詞と目的語を入れ替えできるパターン。

 

例)put the coat on(またはput on the coat) 「上着を着る」

 

⑤:不要型

いわゆる「自動詞+副詞」のパターンこのパターンでは、意味を成立させるのに的語を必要としません

 

例)break up「(関係・友情などが)終わる」

 

なお過去記事(【句動詞表現#2】)では、ムダに細かく考察しています。あくまで実験的なものですが、もしも興味のある方は覗いてみてください。

 

 

 

1.He got to the station on time.

意味:彼は時間通り、駅に着いた

目的語の配置:後置型 

 

語彙解説

この”get to~”は「~に到着する」の意。これはもう皆さんお馴染みの用法ですね。場所を表すthereを使うときは”get to there”ではなく、”get there”となることも一応確認しておきましょう。

 

他の用例

1-1.Where has my pen got to?

   (私のペン、どこ行ったんだろう?)

 

これは所在が分からない人や物に対して言うセリフです。文字通りには「私のペンはどこに到着したのだろうか?」となりますが、「到着した場所」を尋ねるということはすなわち「現在地」を訊いているということなので、比較的分かりやすい表現といえますね^^

 

ちなみに、これは前回までの比喩シリーズでやった「時間的隣接」によるメトニミーに該当すると考えられます。というのは、ここでは

 

①:場所Aに到着する 

②:場所Aにいる[ある]

 

という時系列がまず想定されていて、このうち①について「どこに到着したか」と訊くことによって、②について「どこにいるか[あるか]」と間接的に尋ねていることになるからです。

 

さらにいえば、物が勝手に移動するということは普通ないので、物が主語になっている場合には、擬人化によるメタファーになっているといえるでしょう。

 

「『時間的隣接』によるメトニミーって何?」という方は、最後の方にある関連リンクを参照してみてください。

 

 

2.My father got to ninety.

意味:私の父は90歳になった

目的語の位置:後置型

 

語彙解説

これは「(ある段階)まで到達する[進む]」という意味の”get to~”。

 

意味の捉え方・覚え方

「到達する」とは言っても、用法1のように物理的に移動するわけではありません。ここでいう「ある段階まで到達する」というのは、抽象的にいえば「現在の状態Aから状態Bへと移行する」という意味です。

 

つまり、「状態の移行」を「物理的な移動」になぞらえているのがこの用法2なんです。したがって、これはメタファー表現ということになります。

 

別の言い方をすれば、用例1は「身体的な移動」であるのに対して、この用例2は「精神的な移動」とみなすこともできるでしょう。

 

他の用例

他に時刻や物事の進捗について言う場合もあります。

 

2-1.It got to 11 p.m.

   (午後11時になった)

 

2-2.Where have we got to with this?

   (これ、どこまで進んでるっけ?)

 

例文2-2.のwithは「~に関して」の意味です。つまり、直訳は「これに関して私たちはどこに到着していますか」。これも結局は、進捗における”現在地”を訊いているわけなので、さきほどの例文1-1.同様に「時間的隣接」によるメトニミーが働いていることが分かると思います。

 

 

3.I gotta get to work.

意味:仕事にとりかかなくちゃ

目的語の位置:後置型

 

語彙解説

これは「~を始める[~し始める]」という意味の”get to~”。目的語は、用例のように名詞である場合と動名詞(動詞の-ing形)である場合があります。

 

"gotta"は直接的には"got to"の短縮表現で、大元は"have got to do"です。つまり、

 

I have got to do

I've got to do

I got to do

I gotta do

 

というように、次第に短くなっていったと考えられます。

 

意味の捉え方・覚え方

これも考え方は用法2と同じです。

 

というのは、上の用例中の”get to work”は「仕事という状態に到達する」というのが根本にあり、したがってこれも「状態の移行」を「物理的な移動」になぞらえていると理解できるからです。よってこれもメタファー表現

 

他の用例

3-1.I got to thinking about that.

         (私はそのことを考え始めた)

 

語彙解説でも触れましたが、この3-1.のようにtoの目的語が動名詞である場合も多いです。

 

3-2.I couldn't get to sleep last night.

         (昨晩は眠れなかったよ)

 

一方、3-2.の”get to sleep”は成句と見なしていい表現で、否定文や疑問文で使われることが多いとされています。

 

しかし、成句とはいえ、これもさきほど同様に「状態の移行」を「物理的な移動」になぞらえているメタファー表現にすぎないので、暗記する必要はありません。

 

”get to do”との混同に注意

ここで紹介した”I gotta get to work.”の「work」”や”I couldn't get to sleep last night.”の「sleep」はどちらも名詞ですが、"get to do"(「①:...するようになる ②:...することができる」)のtoは不定詞のtoなので、当然その後にくるのは動詞の原形です。

 

workやsleepのように、動詞と名詞が全く同じ形をしているものは特に注意が必要で、たとえば”I got to work.”のような場合は「仕事をし始めた」または「働くことができた」の2通りの解釈ができてしまいます。こういった場合には前後の文脈や会話の流れなどから判断する必要がありますので、念のため注意しましょう。

 

ちなみに、"get to do"が「...することができる」の意味になるのは、これが”get the chance to do”(「...する機会を得る」)の省略表現だからです。

 

  

4. Don't let him get to you.

意味:彼のことは気にするなよ

目的語の位置:後置型 

 

語彙解説

この”get to~”は「①:~に影響を与える ②:~をイライラさせる[苦しませる、悩ませる] ③:~を感動させる」のうち、②の意味。実際の頻度としては、②または①であることが多いようです。

 

用例の文構造としては、”let+人・物+動詞の原形”(「人・物が...することを許す」)が一番大きな枠となっていて、その「動詞の原形」部分に句動詞”get to~”が収まっています。

 

したがって、用例の直訳は「彼があなたをイライラさせるのを許すな」となります。

 

意味の捉え方・覚え方

一見すると「うわぁ、意味がたくさんあるんだけど!(怒)」となりそうですが、落ち着いて考えてみれば大したことはありません。

 

というのは、この用法は明らかに、①の「影響を与える」という意味を良い意味で捉えた場合は③の意味になり、悪い意味で捉えた場合は②の意味になるというだけだからです。

 

では、①の意味はどこからきたのかについてですが、これは体が一部を表すメトニミーとして説明できます。

 

全体が一部を表すメトニミーというのは、例えば「テレビを消す」という時の「テレビ」がこれに当たります。というのは、ここでいう「テレビ」という言葉が実際に指しているのはテレビという機器そのものではなくて、そのテレビの一部である「電源」を間接的に表しているわけです。

 

このように、あるものの全体を言うことで間接的にその一部分を指す比喩を、当ブログでは「全体と部分」のメトニミーと呼んでいます。詳しくは後の関連リンクから該当記事を参照してみてください。

 

さて、では話を戻して、この用法4の①の場合はというと、”him”という一人の人間全体を言うことで、その一部である「彼の(言動が)持つ影響」を間接的に指している、と考えることができるでしょう。

 

”get to~”の基本義は「~に到着する、到達する」ですから、 用例4の”Don't let him get to you.”とは根本的には「彼の持つ影響をあなたに到達させることを許すな」ということなのです。

 

意味の派生の順番

意味の掲載が歴史的順番であるメリアム・ウェブスター英英辞典を使って、意味派生の順番を確認してみると、

 

2  : to have an effect on: such as
    a  : INFLUENCE
    b  : BOTHER
             All these delays are starting to get to me.

※以下が該当ページ。句動詞”get to~”の記述はページの下の方にあります。

www.merriam-webster.com

 

のようになっており、①の「~に影響を与える」という意味の方が②の「~をイライラさせる[苦しませる、悩ませる]」という意味よりも歴史的に早い時期に使われ始めたことが分かります。

 

これは前回扱ったシネクドキの働きによる意味派生、つまり意味の特殊化の結果、①の意味から②の意味が生まれてきた、というように理解できます(下の図1参照)。

提喩 イメージ

図1 シネクドキによる意味の特殊化

 シネクドキというのは、たとえば「花見」というときの「花」が「桜」か「梅」しか実際には指さないように、上位カテゴリに位置するものが、その下位カテゴリに位置する別のものを表す(=意味の特殊化)、あるいはその逆のパターン(=意味の一般化)であるものを言います。よく分からないという方は最後の方にある関連リンクから該当する記事を参照してみてください。

 

なお、③の「~を感動させる」という意味についてはメリアム・ウェブスターに記載がないですが、②の意味が使われ始めた時期以降に生まれたものと考えていいでしょう。その場合も、シネクドキによる意味の特殊化が働いたと考えられます。

 

 

5.We've gotta get him to the hospital!

意味:彼を病院へ連れて行かないと! 

目的語の位置:割り込み型

 

語彙解説

この”get...to~”は「...を~に連れて行く[持って行く]」の意。

 

意味の捉え方・覚え方

これは用法1の他動詞バージョンです。つまり、”get A to B”は「AをBに到着させる[到達させる]」というのが元々の意味であり、「...を~に連れて行く[持って行く]」というのはその意訳にすぎません。

 

他の用例

He's got the spotlight all to himself.

(彼は世間の注目を独占した)

 

これは”get~ all to oneself”(「~を独占する」)という成句ですが、これも元は「~を全て自分自身のところへ持ってくる」という意味です。全てのものを自分の所に持ってくるということは、すなわち「独占する」ということになりますよね。

 

なお、"all"がない場合や、getをhaveやkeepにしたパターンもあります。

 

 

関連リンク

1.メタファーについてはこちら↓

eigogakushu.hatenablog.jp

 

 

2.メトニミーおよび「時間的隣接」によるメトニミーについてはこちら↓

eigogakushu.hatenablog.jp

 

 

3.「全体と部分」のメトニミーについてはこちら↓

eigogakushu.hatenablog.jp

 

 

 4.シネクドキについてはこちら↓

eigogakushu.hatenablog.jp

 

 

編集後記

今回はいかがだったでしょうか。

 

”get to~”は中学校で習うような基本的な句動詞ですが、本編で見てきたように、この句動詞だけでも色々な意味を表現することができます。それはひとえにメタファーなどの比喩の働きによるもので、 日常会話というのはそれだけ比喩に大きく依存しているわけです。

 

ということは、英語の日常会話ができるようになるということは、「比喩依存症」になるということなのかもしれませんね(笑)

 

それでは、また次回!

 

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