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How could you fall for that old trick?ってどんな意味? 【句動詞表現#64】

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皆さん、こんばんは。ねこらいたーです(= ̄ω ̄=)

 

今回のテーマは、句動詞”fall for~” について。初見の方にとっては、この句動詞はその意味と使われている単語とのギャップが大きく感じるかもしれません。しかし、いつものようにキホンに戻って考えてみると、なぜそのような意味になるのか見えてきます。

 

では、本編へどうぞ。

 

 

★タイトルにある英文のヒント:↑の画像から想像してみてください

 

 

始めに~用語についての注意~

初めての方向けの注意事項です。過去の句動詞解説記事をご覧になったことがある方は、お手数ですが上の目次から各用例の解説に飛んでください。

 

方位詞とは?

当ブログでは「方位詞」という用語が出てきます。これは、句動詞で使われる方向・空間を表す前置詞と副詞(例:up, off, down, forなど)をまとめて指す言葉です。より一般的には、「不変化詞」「パーティクル」「空間詞」などとも言いますが、これらとほぼ同じものと考えてください。

 

このような呼び方をするのは、句動詞で使われる前置詞あるいは副詞にはその両方の用法を持つものが多く、「これは前置詞だから〇〇」「これは副詞だから△△」というように区別して考えることにあまり利点がないからです。

 

具体的にどういう前置詞・副詞が句動詞で使われるのかについては、以下の記事で詳しくまとめてあります。よければ参照ください。

 

eigogakushu.hatenablog.jp

 

句動詞の目的語位置について

このブログでは、句動詞を紹介するときに、その目的語の位置を次のようにパターン化してご紹介しています。なお、この分類は基本的にOxford Phrasal Verbs Dictionaryに従って作成したものです。

 

①:割り込み型

動詞と方位詞を必ず離してその間に目的語を割り込ませるパターン。目的語と方位詞の位置を入れ替えることは普通しません。数としては少数派です。なお、これには例2のように目的語を2つとるものも含みます。

 

例1)see John in 「ジョンを中まで案内する[見送る]」

例2)get the bookshelf down the stairs 「本棚を階段から降ろす」

 

②:後置型

いわゆる「自動詞+前置詞」のパターン必ず方位詞の直後に目的語を置きます

 

例1)get up a ladder 「ハシゴを登る」

例2)get up to London「ロンドンに行く」

 

③:後置型

方位詞の直後に目的語を置くのが普通なパターン。パターン②ほど目的語の位置は絶対的ではないので「”後置型」としてあります。

 

例)put on weight 「体重が増える」

 

④:入れ替え可能型

文字通り方位詞と目的語を入れ替えできるパターン。

 

例)put the coat on(またはput on the coat) 「上着を着る」

 

⑤:不要型

いわゆる「自動詞+副詞」のパターンこのパターンでは、意味を成立させるのに的語を必要としません

 

例)break up「(関係・友情などが)終わる」

 

なお過去記事(【句動詞表現#2】)では、ムダに細かく考察しています。あくまで実験的なものですが、もしも興味のある方は覗いてみてください。

 

 

 

1.How could you fall for that old trick?

意味:どうしたらそんな古い手に引っかかるのさ

目的語の位置:後置型 

 

語彙解説

今回のタイトル。この”fall for~”は「(策略・嘘・広告など)に騙される[ひっかかる]」の意です。

 

"How could you ~?"は驚き・呆れ・非難などを表す言い方で、”How could you?”(「なんてことをするんだ[言うんだ]」「よくそんなことできたね[言えたね]」)のように使われることもあります。その場合は、”How could you do that?”の省略表現と考えるのが一般的です。

 

意味の捉え方・覚え方 

後述の「なぜ”fall for~”がこのような意味になるのか?」 にて、2つまとめてご紹介します。

 

 

2.I guess he really fell for Zoe.

意味:彼、ゾーイに本気で惚れたんじゃないかな

目的語の位置:後置型

 

語彙解説

この”fall for~”は「(人など)に惚れこむ;夢中になる」 の意。

 

意味の捉え方・覚え方

後述の「なぜ”fall for~”がこのような意味になるのか?」 にて、2つまとめてご紹介します。

 

他の用例

人でなく、物に対しても使うことがあります。

 

2-1. She fell for the house at first sight.

     (彼女は、その家に一目ぼれした)

 

 

なぜ”fall for~”がこのような意味になるのか?

"fall for~"の根幹にある構造

動詞のfallといえば、状態の変化を表す言い方で”fall into~”(「~という状況になる[陥る]」)という表現パターンがありますよね。

 

この観点から今回の句動詞”fall for~”を考えてみると、

 

3.fall into debt for unavoidable reasons

  (やむを得ない事情により借金する)

 

のように、fall+ある状況+for+原因・理由といった構造が隠れていると推測できます。

 

これに従うと、たとえば"fall for one's line"(「...の口車に乗せられる」)という成句であれば、

 

I fell into debt for his line.

 

赤字部分のように、「結果」に相当するものがfallとforの間に隠れているということになります。

 

同様に、今回の用例1”How could you fall for that old trick?”においても、"that old trick"という原因によって陥った「結果」に当たるものがfallとforの間に隠れている、というように理解できます。

 

”fall for~”が悪い意味にも良い意味にもなるのはなぜ?

さきほど見たように、今回の”fall for~”は「~に騙される」と「~に惚れる」という2つの用法をもっており、この点だけを見ると、一方が悪い意味でもう一方が良い意味になっていて、意味の方向性が全くの正反対であるように見えますよね。

 

どうしてこのように”fall for~”は一見矛盾している用法をもっているのでしょうか?

 

結論から言いますと、この疑問については次のように考えることができます。

 

”fall for~”の根本的な意味は「(結果の良し悪しに関係なく)予期しない結果になる」ことである

 

実際、何かに騙されたり、あるいは誰かに惚れるのは突然です。騙されるということを予期したうえで騙される人はいませんよね。いたとしたら、それは騙されるフリをしているだけです。これは惚れるという事象も同じで、惚れることを予期したうえで誰かに惚れる人は普通いないでしょう。

 

この観点で考えれば、あの有名な”fall in love with~”が「~に恋をする;~が大好きになる」という意味になるのも合点がいくと思います。つまりこういった場合のfallは、それ自体は必ずしも悪いニュアンスを持つわけではなく、むしろ「突発性」を表すだけの中立的なニュアンスの語なのです。

 

実際、動詞のfallを辞書で引くと「急に...になる;...に陥る」といった意味が載っていると思いますが、今回の句動詞”fall for~”のfallもこの意味で使われていると考えていいでしょう。

  

”fall for”の目的語におけるズレ

さて、ここまでの話で”fall for~”の捉え方が大体見えてきたと思いますが、最後にもう少しだけ細かい部分を見て今日は終わりにしたいと思います。

 

まず上述の説明をまとめると、”fall for~”には「fall+予期しない状況+for+原因・理由という構造が隠れているということになりますよね。

 

この考えに従うと、用例2の”he really fell for Zoe”という部分は「ゾーイという人間そのものが原因で、彼女に惚れるという状況に陥った」ということになります。

 

これを英語で”無理やり”書くとしたら、

 

he really fell in love with Zoe for her

 

のようになります。

 

しかしこれは少し変ですよね。「変」といっても、こういう言い方を普通しないという意味で「変」なのではありません。ゾーイに惚れる原因となるのはあくまで彼女の見た目や言動であって、ゾーイという存在そのものではないという意味で「変」なのです。

 

ここでピンときた方もいるかもしれませんが、実はコレ、以前ご紹介した全体が部分を表すメトニミーが働いているんです。つまり用例2のhe really fell for Zoe”においては、Zoeと言うことで”Zoe's behavior”や”Zoe's looks”などを間接的に表しているわけです。

 

全体が部分を表すメトニミーというのは比喩の一種で、例えば「テレビを消す」という時の「テレビ」がこれに当たります。というのは、ここでいう「テレビ」という言葉が実際に指しているのはテレビという機器そのものではなくて、そのテレビの一部である「電源」を間接的に表しているわけです。

 

このように、あるモノの全体を言うことで間接的にその一部分を指す比喩を、当ブログでは「全体と部分」のメトニミーと呼んでいます。詳しくは後の関連リンクから該当記事を参照してみてください。

 

さて、以上の考え方に従うと、用例2の”he really fell for Zoe”の部分は結局、”he really fell for Zoe's behavior”あるいは”he really fell for Zoe's looks”といったことを指していることになります。

  

こういった比喩は特別なことではなく、たとえば"Hear me out."(「よく聞いて」)というときのmeも同じです。

 

「聞く」対象はあくまで”my words”あるいは”what I say”であって、meという語が指す人そのものではありませんよね。つまり、ここでも全体が部分を表すメトニミーが作用しているというわけです。

 

   

関連リンク

 1.メタファーについてはこちら↓

eigogakushu.hatenablog.jp

 

 

 2.「全体と部分」のメトニミーについてはこちら↓

eigogakushu.hatenablog.jp

 

 

編集後記

いかがだったでしょうか。

 

今回の”fall for~”は用法が二つしかなく覚えるのはさほど苦労しないでしょうから、なぜこのような意味になるのかふと気になった時に、この記事が少しでもその助けになれば幸いです。

 

ちなみに、Online Etymology Dictionaryによれば、”fall for~”は1900年代から使われ始めた比較的新しい句動詞のようです。用法が少ないのもそれが理由かもしれませんね。

 

ではまた。

 

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