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徹底解説!”go off”が「(アラームが)鳴る」の意味になる理由① 【句動詞表現#61】

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皆さん、こんばんは。ねこらいたーです(= ̄ω ̄=) 

 

前回の記事(【英語学習のヒント#8】)で"go off"をメトニミーの例として取り上げましたが、よくある疑問なのに言及していない点もあったため、良い機会と思い今回改めてまとめておくことにしました(比喩の3類型についての話は次々回から再開します)。

 

この”go off”編は全2回になる予定ですが、今日の説明部分は前回の内容に少し補足した程度なので、前回の内容をご存知の方は目次から「『鳴る』という現象を抽象的に捉えると?」の項目までスキップしてください。

 

では、本編へどうぞ。

 

 

 

目覚まし時計が”go off”する?

突然ですが、句動詞”go off”には次のような”奇妙な”用法があることを知っていますか?

 

1)The alarm clock went off at 7.

 「7時に目覚まし時計が鳴った」

 

このように”go off”には「(アラームが)鳴る」という意味があるのですが、多くの方はこれを見て以下のような疑問を持つと思います。

 

[疑問その1]

"go off"の文字通りの意味は「離れていく」だけど、この場合「何が」「どこから」離れていくの?「鳴る」との関係は?

 

[疑問その2] 

”off”って書いてあるのに、どうして「鳴り止む」ではなくて「鳴る」の意味になるの?

 

もしかすると他の疑問を持っている方もいるかもしれませんが、とりあえずこの2点に絞ってお話したいと思います。今回はこのうち[疑問その1]についてです。

 

 

[疑問その1] 「何が」「どこから」離れていくの?

ここでは以下の疑問についてご説明します。

 

"go off"の文字通りの意味は「離れていく」だけど、この場合「何が」「どこから」離れていくの?「鳴る」との関係は?

 

実はこの疑問は「換喩(メトニミー、metonymy)」と呼ばれる比喩の考え方で解決できるのですが、皆さん聞いたことはあるでしょうか?

 

換喩(メトニミー、metonymy)って?

 一般的な説明では、換喩(以下、メトニミーと表記)とは物事の「隣接性」に基づいた比喩とされています。もう少しカンタンに言うと、関連性が強いもの同士の間で成立する比喩のことですね。

 

その中でも「全体と部分」という関係性に基づいたメトニミーがあるのですが、今回取り上げている"go off"もこのパターンのメトニミーが関わっています。

 

例えば、以下の例文を見てください。

 

2)家の電話を取ったら、途端に切られた

3)もう寝るのでテレビを消した

 

日本語を日常的に使っている方にはどちらの文にも違和感を感じないでしょうが、これらの文を文字通りに解釈するとオカシイことにお気づきでしょうか?

 

本来「(固定)電話」といえば、受話器と押しボタンのある本体をセットで指しますが、かかってきた電話に対応するときに受話器だけでなく本体まで手に取って通話する人はまずいません。

 

つまり、2)では「電話」という全体を指す言葉を使って、実際にはその電話の一部である「受話器」を指しているわけですね。これが「全体と部分」のメトニミーです。

 

3)も同じ発想です。「テレビ」という全体を指す言葉を使って、実際にはそのテレビの一部である「電源」を指しています。

 

こういった発想は英語でも同じです。

 

4)The entrance fee per head is $10.

  「入場料は一人あたり10ドルになります」

5)He heard the piano.

   「彼はピアノの音聞いた

 

4)では、”head”という人体の一部を指す言葉を使って、実際にはその全体を指しています。また5)は、”piano”という全体を指す言葉を用いて、実際にはそのピアノの一部である「演奏音」を指しています。

 

例文1)をメトニミーで考えると?

では、今説明した「全体と部分」のメトニミーという観点で、もう一度例文1)を見てみましょう。

 

1)The alarm clock went off at 7.

 「7時に目覚まし時計が鳴った」

 

これを文字通りに解釈すると、時計本体が”go off”すなわち「離れていく」ということになり、まるで時計が独りでに移動したかのような印象を受けますよね。

 

しかしメトニミーで考えてみると、”go off”の実際の主語は"clock"ではなく”alarm sound”だったということが分かります。つまりこれも全体が一部を表していたわけです。

 

ちなみに、次のように言うことが多いことも上記の説明の状況証拠になるでしょう。

 

6)A fire alarm suddenly went off.

 「火災報知器が突然鳴った」

 

”go off”の本当の主語が”alarm sound”であることを考えれば、こちらの6)の方が文字上の主語と本当の主語が一致しているので、より正確な言い方といえますね^^

 

さて、ここまで分かれば「どこから離れていくのか」についてはすぐに解決できます。

 

というのも、”alarm sound”すなわちアラーム音がどこから離れていくかといえば、その音を発している機器本体しかないからです。

 

「鳴る」という意味との関係とは?

ここまでの説明で「『何が』『どこから』離れていくのか?」という疑問に対しての答えは、「『アラーム音が』『機器本体から』離れていく」ということが分かりました。

 

この点を加味して先の例文1)と6)に手を加えてみると、それぞれ7)・8)のようになります。

 

7)The alarm went off the clock at 7.

8)A fire alarm suddenly went off the device.

 

1)と6)において文字上には表れていないものの、「意味関係」としてはこれらのようなものが想定されているわけです(この点についての詳細は次回の記事にて補足します)。

 

さて、こうした隠れた意味関係が分かれば、「鳴る」という意味との関係についてはカンタンです。7)あるいは8)を文字通りに訳してみてください。7)であれば、

 

「アラーム音が7時に時計から離れていった」

 

となりますよね。これをもう少しだけ自然な訳にすると

 

「アラーム音が7時に時計から発せられた

または

「アラーム音が7時に時計から放出された

 

あたりになるでしょう。

 

さらに意訳するとどうなりますか?・・・そうです!

 

「アラーム音が7時に鳴った

 

となりますね。これが答えです

 

つまり何が言いたいかというと、「(アラームが)鳴る」という”意味”は結局のところ最も自然な”日本語訳”でしかないということです。

 

「鳴る」というのは確かに自然な和訳ではありますが、それが原因で"go off"の本来の意味が分からなくなってしまっては本末転倒ですよね。

 

ねこらいたー的には、この意味の”go off”の日本語訳は「発せられる」あたりがいいかなと思います。こちらの方が本来のニュアンスが多少残っているので「鳴る」よりは理解しやすくないでしょうか?

 

「鳴る」という現象を抽象的に捉えると?

ここまでは、前回(【英語学習のヒント#8】)の説明と大体同じですが、今回はもう少し突っ込んで考えてみましょう。

 

さきほど「(アラームが)鳴る」という”意味”は結局のところ最も自然な日本語訳でしかないといいましたが、これを逆に言えば、”go off”という英語は「(アラームが)鳴る」という現象を抽象的に捉えた表現といえます。実際、何かが鳴るという現象をごく簡単に捉えると、

 

・発せられる音(これをXとします)

・その音を発する物体(これをとします)

 

という2つが存在していますよね。そしてこの関係を英文にすると、

 

X goes off Y

 

 となります。

 

では、XとYの関係を逆にすると句動詞はどうなると思いますか?

 

 実は”go off”とキレイに対応するものがあるんです。それが次の表現。

 

gives off X (または、Y gives X off)

「YはXを発する」(※1)(※2)

 

さきほど、ねこらいたー的にはこの”go off”の日本語訳は「発せられる」あたりがよさそうだと呟きましたが、そのように考えた理由のもう一つが上記のような自動詞と他動詞の対応関係がキレイに成立しているという点にあります。

 

これを表にすれば以下のようになりますね↓

 

go offとgive offの関係図

図1 ”go off”と”give off”の関係

 

赤枠で囲ってある部分の関係を参考にして覚えると忘れにくいと思います。

 

なお、「対応関係」の項目のところで”X goes offY”というように書いたのは、言外に含まれている意味を明確にするために書いただけです。「(アラームが)鳴る」の意味で実際に”go off”が使われるときは、”Y”に相当する部分は書かないのがあくまで普通なのでご注意ください(※3)。また、赤枠の中にある「Yから」の箇所がカッコ書きなのも同様の理由によります。

 

以上が[疑問その1]についての説明になります。

 

※1 Xのコロケーション

コロケーション的にはXには光・熱・においなどを表す単語が来ることが多いですが、音を表す単語を置くことも一応可能です。この点はLDOCEにも記載があります。

※2 類義語

句動詞”give out~”や”give forth~”にも同様の用法があります。ここでは、”go off”と同じoffが使われている点で覚えやすいgive offを例として挙げました。

※3 「go off +名詞」という形は実際に存在するのか?

結論から言えば、「存在します」。ただし、実際にその使い方をするのは「(アラームが)鳴る」の意味ではなく、「~から外れる」「~を好きでなくなる;~と疎遠になる」「~をやめる」などの意味においてです。

 

 

編集後記

いかがだったでしょうか。

 

・・・といっても前回とほぼ同じなので感想は特にないという方が多いですよね(汗)。

 

今回の”go off”と”give off”はキレイな対応関係がありましたが、これに限らず意味的に対応する句動詞とセットで覚えると忘れにくくなりますので、おススメです^^

 

では、また。

 

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