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熟語・句動詞攻略のカギ! 比喩の3類型って?②~換喩(メトニミー)の基本編~【英語学習のヒント#7】

換喩 アイキャッチ1

皆さん、お久しぶりです。この度ひっそりと復活いたしました、ねこらいたーです(= ̄ω ̄=) 

 

しばらく放置状態でしたが、またゆっくりと再開していきますので、よろしくお願いします。

 

さて、今回からは3類型のうちの2番目となる「換喩(メトニミー)」についてご紹介していきます。

 

この「換喩」と呼ばれる比喩は、前回扱った「隠喩(メタファー)」と違い一般にはあまり知られていないようですが、実は英語の口語表現を理解する上でとても有効な考え方なんです。もちろん、前回の「隠喩」や後に扱う「提喩」も有効な考え方なのですが、それら3類型の中でも特に重要な考え方がこの「換喩(メトニミー)」とさえいえると思います。

  

それでは、内容に入っていきましょう。

 

 

 

 

換喩(メトニミー、metonymy)って?

換喩 イメージ

図1 換喩のイメージ

換喩(メトニミー、metonymy)とは、一言でいうと、2つの事柄の「隣接性」に基づいた比喩表現のことで、実は動詞を含む熟語(以下、「成句」と表記)や句動詞の意味拡大に関わっている点で重要なんです。

 

この「隣接性」というのは一般的に言われる特徴なのですが、ねこらいたー的には「関連性」 と言い換えてもOKだと思います。つまり、元々関連のあるもの同士の間で生まれる比喩。これが換喩(メトニミー)です。

 

でも流石にこれだけではよく分かりませんよね・・・。次から具体的に見ていきましょう。

 

・・・ちなみにですが、漢字で「換喩」と書くと隠喩(メタファー)なのか、それとも換喩(メトニミー)なのかが見づらくなりそうなので、以下では「メトニミー」と表記することにします。

 

「隣接性」ってこういうこと

まずは、「メトニミーのキーワードである『隣接性』って何?」というところから始めてみましょう。

 

次の1)を見てください(緑の太字はメトニミーの該当部分。以下同じ)。

 

 1)昨日は、を食べた

 

この文を文字通りに解釈すれば、「鍋という器自体をボリボリと食べてしまう」ことになりますが、そんな人はファンタジー世界の住人ぐらいですよね。

 

当然のことながら、ここでいう「鍋」というのは「鍋の中身である具材」(例:肉、豆腐、魚の切り身など)を指していて、それを食べるということです。鍋の断面図を思い浮かべてもらうと、入れ物としての鍋とその中身である具材が文字通り隣接していることが分かるでしょう(下の図2を参照)。

鍋と具材の隣接

図2 入れ物と中身の隣接

 このように、物理的(または空間的)に隣接していることでイメージ上の結びつきが強くなり、メトニミーが生まれてくると考えられます。図1にあるように鍋料理に関するものはいくつもある中で、具材を意味するメトニミー表現として「鍋」だけが使われるのも、この「物理的隣接」があるからでしょう。

換喩 イメージ

図1 換喩のイメージ(再掲)

さて、以上がメトニミーのキホンとなります。

 

実際には物理的・空間的な隣接に当てはまらないものも出てくるのですが、そのような場合でも「何かと何かが隣接(≒関連)している」という点は共通しているので、その点だけ押さえてもらえればひとまずOKかと思います。

 

英語におけるメトニミー

上の説明では日本語の例を見ましたが、では英語ではどうかというと、全く同じことがいえます。2)の例文を見てください。

 

2)We had a good bag that day. (LDOCE)

 「その日はだった」

 

文中の”bag”は誰でも知っている単語ですが、実はこれには「(漁・狩り)の獲物」という意味があります。

 

この意味を知っていると、どうしてbagがこういった意味をもつのか不思議に思わないかもしれませんが、本来の意味が「袋、かばん」であることを考えれば、2)でのbagは文字通りの意味からズレていますよね。この「ズレ」は比喩であるという証拠です。

 

では、2)のbagが本来の意味とはズレた意味をもつのはなぜかといえば、もうお分かりでしょう。そうです。先の1)で出てきた「鍋」と同様に、入れ物である"bag"がその中身である「(漁・狩り)の獲物」を指すようになったわけです。

 

他の例でいえば、皆さんよく知っている”dish”が「料理」を意味するのも同じ仕組みで説明できます。つまり、本来「皿」を意味するdishがメトニミー的思考によって、その皿に載っているもの、すなわち「料理」を意味することになるわけです。例えば下のイラストのような感じですが、これも皿とその上に載っている料理が(タテ方向に)隣接してますよね。

換喩 イメージ

「換喩」とか「メトニミー」なんて書くと特殊な表現だと思ってしまうかもしれませんが、上で見たように実はごく一般的な単語であってもこのメトニミーという仕組みによってその語義を拡大させていることが分かります。英単語学習の観点でみれば、こういった性質は注目ポイントですね^^

 

 

熟語・句動詞攻略のカギになるメトニミーのパターンって?

一般に「比喩」と聞くと、先ほどの1)や2)ように名詞の例を思い浮かべがちではないでしょうか。ひょっとすると「比喩って名詞だけでしょ?」と思っている方もいるかもしれません。

 

しかし実際には、名詞以外の品詞つまり動詞や形容詞などのメトニミー表現も多数存在しているんです。

 

そのことを踏まえた上で「熟語・句動詞攻略のカギになるものは何か?」という観点で考えてみると、中でも特に動詞のメトニミーについて知っておくことが重要といえます。

 

その理由は、動詞のメトニミーは「比喩である」という意識が名詞の場合よりもされにくいのに、実は動詞を含む成句句動詞の意味形成に大きく関わっていると考えられるからです。

 

そこで、以下ではこの「動詞のメトニミー」の仕組みについて少し詳しく見ていくことにします。

 

"show a leg"の謎

 突然ですが、皆さんは次のような表現を見たことがあるでしょうか。

 

3)Show a leg!

 

「簡単すぎ!『脚を見せろ』でしょ?」と思った方、辞書を引いてみてください。

 

英英辞典も含めていくつかの辞書を見てみると、複数の意味を載せているものもあります。しかし共通する意味として「起床する、起きる」という説明が載っていることから、これが主な意味と見なしてOKでしょう。ということで、3)は「起きなさい」という意味になります。

 

では、なぜこの意味になるのでしょうか?

 

「さっき出てきたbagがメトニミーだったのと同じで、今度はlegかshowがメトニミーでは?」 と思った方もいるかもしれませんね。しかし、残念ながら、どちらの単語を引いてもそれらしき意味は載っていません・・・。

 

謎が深まるばかりのこの表現ですが、実は同じ発想による日本語表現が存在するので、いったん日本語の場合で考えてみましょう。

 

日本語での類例

まずは例文4)を見てください。

   

4)男性はそう話しながら、ワイングラスに口を付けた

 

もちろん、これは文字通り解釈することも可能です。その場合は「グラスに唇を接触させる」という行為だけを指すことになります。しかし、一般的な解釈では「グラスの中にあるワインを飲んだ」という意味になりますよね。

 

このように、実際に表す意味内容が字面通りの意味からズレているので、実はこれも比喩の一種(さらにいえばメトニミーの一種)なんです。

 

これは具体的にはどのようなパターンの比喩なのかというと、

 

先行する行動(または状況)後続する別の行動(または状況)を表す

または

後続する行動(または状況)先行する別の行動(または状況)を表す

 

というものになります。 

  

先ほどの鍋の例では、入れ物である鍋とその中身である具材が物理的あるいは空間的に隣接していましたが、このパターンでは2つの行動が時系列的に隣接していると考えることができます(以下、「時間的隣接」と表記)。

 

この点を下の図3で確認してみましょう。

時間的隣接 イメージ

図3 ワインを飲むまでの一連の動作

4)では上図のような一連の動作が想定できますが、このうち「グラスに口を付ける」という先行動作がその直後の「ワインを飲む」動作を表しているわけです。

  

今度は逆のパターン、すなわち後続する行動先行する別の行動を表す例を見てみましょう。

 

5)人知れず、彼女は夜な夜な枕を濡らした

  

この5)の状況を大雑把に書けば

 

泣く

(涙が枕にこぼれて)枕を濡らす

 

という時系列になるはずです。

 

つまり、後続する行動先行する別の行動を表していますよね。あるいは、「枕を濡らした」という結果がその原因である「泣く」動作を表しているという見方もできます。

 

このように、時間的隣接に基づくメトニミー表現では、2つの行動の間に因果関係があると見なしてよい表現が一定数あります(※1)。

 

※1 時間的隣接において因果関係は必ずあるのか?

因果関係があるといえるほどの結び付きがない行動・状況でもメトニミーになっているケースもあります。そのようなケースでは「一般的・常識的に考えて普通はこうなるだろう」という連想が働いているか、あるいは”膝に矢を受けてしまってな”に代表されるような、何らかの作中に出てくる(特殊な)場面に基づく連想が働いていると思われます。また、これらのような因果関係が薄い比喩は、メトニミーの中でも特に「転喩(メタレプシス、metalepsis)」と呼ばれることもあるようです。

 

”show a leg”の仕組みはコレ

ここまでの考え方を踏まえて、もう一度3)について考えてみましょう。

 

3)Show a leg!

 「起きなさい

 

まず、ベッドから起床するときの様子を思い浮かべてみてください。おおよそ以下のような一連の動作があるはずです。

 

上半身を起こす

掛け布団をどける

脚をベッドから降ろす

(立ち上がって)ベッドから出る

 

このうち「脚をベッドから降ろす」というのは、掛布団に隠れて”見えない状態”の脚を布団の外に出して”見える状態”にすることでもあるので、ある意味「脚を見せる」動作ともいえますよね。つまりこれが”show a leg"の文字通りの意味です。そしてこの動作がその直後の「(立ち上がって)ベッドから出る」動作、つまり"get out of bed"を指しているんです

 

以上をまとめると、"show a leg"が「起床する」(=get out of bed)の意味になるのは、先ほどのワインを飲む例と同じで、先行する行動(または状況)後続する別の行動(または状況)を表すパターンだからと考えることができます。

  

 

編集後記

改めまして、皆さんご無沙汰しております。

 

非常に中途半端なところで更新が止まったままにしてしまい大変失礼しました・・・。今後も気ままに更新していきますので、どうぞよろしくお願いします。

 

さて、冒頭でも言ったように、今回から扱う「メトニミー」と呼ばれる比喩はかなり重要だと考えていて、その結果、(いつものように)記事がながーくなりそうなので、3回ほどに分けて記事を紹介していくつもりです。あらかじめご了承くださいませ。

 

そして、次回は今回扱った「隣接性」とはやや異なるパターンのメトニミーについてご紹介する予定です。

 

それでは、今日はこの辺で。 

 

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