Haruki Murakami's new book has really taken off. ってどんな意味?~take off その7~【句動詞表現#59】
皆さん、こんばんは。ねこらいたーです (= ̄ω ̄=)
take off編ラストとなる今回は自動詞用法3つを見ていきます。
これ以上の記事分割は逆に見づらいと判断して色々と詰め込んでいるため、記事が全体として長くなっていますが、あらかじめご了承ください。
では、はじめます。
★記事タイトルのヒント:比喩表現です。
- 初めての方へ
- take off編 過去記事一覧
- take offの自動詞用法を上手く捉えるコツとは?
- 22.Whenever things get tough, she takes off.
- 23.Our plane took off on time.
- 24.Haruki Murakami's new book has really taken off.
- 編集後記
初めての方へ
当ブログでは、句動詞で使われる前置詞と空間を表す副詞をまとめて方位詞と呼んでいます。
また、このブログでは、句動詞を紹介するときに、その目的語の位置を次のようにパターン化してご紹介しています。
①:割り込み型
動詞と方位詞を必ず離してその間に目的語を割り込ませるパターン。目的語と方位詞の位置を入れ替えることはできません。
例)get John up 「ジョンを起こす」「ジョンを立たせる」※目的語が「人」の場合
②:後置型
必ず方位詞の直後に目的語を置くパターン
例1)get up a ladder 「ハシゴを登る」
例2)get up to London「ロンドンに行く」
③:準後置型
方位詞の直後に目的語を置くのが普通なパターン。パターン②ほど目的語の位置は絶対的ではないので「”準”後置型」としてあります。
例)put on weight 「体重が増える」
④:入れ替え可能型
文字通り方向詞と目的語を入れ替えできるパターン
例)put the coat on(またはon the coat) 「上着を着る」
⑤:不要型
いわゆる「自動詞+副詞」のパターン。このパターンでは、意味を成立させるのに目的語を必要としません。
例)break up「(関係・友情などが)終わる」
過去記事(【句動詞表現#2】)では、ムダに細かく考察しています。もし興味のある方がいれば覗いてみてください。
take off編 過去記事一覧
takeとoffのコアイメージ / 用法1~4について
↓ 以下の記事を参照ください。「take+目的語+off+目的語」パターン編①です。
用法5~8について
↓以下の記事を参照ください。「take+目的語+off+目的語」パターン編②です。
用法9~14について
↓以下の記事を参照ください。「take+目的語+off+目的語」パターン編③です。
用法15~16について
↓以下の記事をご覧ください。目的語が1つのパターン編その①です。
用法17~18について
↓以下の記事をご覧ください。目的語が1つのパターン編その②です。
用法19~21について
↓以下の記事をご覧ください。目的語が1つのパターン編その③です。
take offの自動詞用法を上手く捉えるコツとは?
前回までの「take...off」のような目的語が1つだけのパターンは、【句動詞表現#56】の「『take off+目的語』に対する基本的な考え方って?」の項目にて説明したように、
take + 目的語① + off + 目的語②
という基本形を想定し、目的語②を復元してあげればOKでしたね。
今回取り上げる自動詞用法では、この考え方にある見方を”ちょい足し”するだけで実は簡単に説明できるんです。その考え方というのが、
「再帰動詞」
という観点です。
これについては【句動詞表現#23】などの過去記事で度々説明していると思いますが、初耳だという方向けにここでもう一度振り返っておきましょう。
この再帰動詞というのは、一言でいうと、
見かけ上は「他動詞+目的語(+修飾語)」という形を取るが、意味としては自動詞のようになっている動詞
のことです。
例えば、
apply to~(「~に適応する」)
がこれに該当します。
この形は元々、
apply oneself to~(「自分自身を~に適応させる」)
であって、そのoneselfが省略されるかたちで自動詞用法が生まれました。
こういった現象は英語史などでも指摘されていて、この再帰動詞が歴史上のある時期にoneselfをなくした結果として大量の自動詞が生まれたとされています。
再帰動詞の他の例としては、
●kill oneself(「自殺する」)
●enjoy oneself(「楽しく過ごす」)
●amuse oneself with~(「~をして楽しむ」)
などがありますね。
ということで、句動詞take offの自動詞用法は、次のような流れで発生したと理解することができます。
take + 目的語① + off + 目的語② <基本形>
↓ 目的語①がoneselfになる
take + oneself + off + 目的語②
↓ oneselfと目的語②の省略
take off
さて、これでtake offの自動詞用法が発生した経緯が掴めましたが、この流れを逆に考えると、ある自動詞用法のtake offがなぜ特定の意味になるのかを知りたければ基本形まで遡って考えればいいわけです。以下ではこの観点に立って、各用法を眺めていきます。
22.Whenever things get tough, she takes off.
意味:苦しくなると、彼女はいつも急にいなくなる
目的語パターン:不要型
※例文の出典:Oxford Phrasal Verbs Dictionary
語彙解説
このtake offは「突然または急いで、どこか遠くへ行く」の意。
ジーニアス英和大辞典ではこの用法を『<人・車などが>〔・・・に向かって〕(急いで)出発する』と説明していますが、それが派生的な意味合いであることは上記の見出し例文を「出発する」と訳せないことからも明らかです。
また、これと同じ意味でtake oneself offという形になる場合もあります。この場合のtakeはもちろん他動詞です。
例)He took himself off to Tokyo.
「彼は急に東京に発った」
このような表現が存在することからも、自動詞用法のtake offが元々はoneselfを目的語にした他動詞表現だったことは間違いないでしょう。
意味の捉え方・覚え方
先ほどの考え方に従って、take offから基本形である「take + 目的語① + off + 目的語②」まで遡ってみましょう。
まず目的語①はoneselfですね。目的語②に関しては話者がいる場所を指している”the place”があると考えればいいでしょう。すると、
take oneself off the place
のようになります。見出し例文に合わせれば、
take herself off the place
ですね。
このまま訳せば「彼女自身をその場所から取り去る」ですが、自分をある場所から取り去るということは、要するに、その場からいなくなることを意味します。これが用法22「突然または急いで、どこか遠くへ行く」の正体です。
「突然または急いで」というニュアンスの正確な出所に関しては不明ですが、 これも恐らくはoffから来ていると思われます。というのも、offのイメージである「どこかから離れる」という現象は一瞬の出来事だからです。
離れようとする動作がどれほどゆっくりであっても、2つのものが完全に離れるのは一瞬ですよね。その観点からすると、dieやjumpなどのいわゆる「瞬間動詞」と近いと言えるでしょう。ともかく、このような瞬間的なイメージが「突然または急いで」といったニュアンスを生んだとしても不思議ではありません。
23.Our plane took off on time.
意味:私たちが乗った飛行機は時間通りに離陸した
目的語パターン:不要型
語彙解説
このtake offは「(飛行機などが)離陸する」の意。 on timeは「定刻に」。
意味の捉え方・覚え方
意味そのものに関してはあまりに有名なので特に解説はいらないでしょうが、 これも用法22と同じ考え方で説明できます。ただし、この場合の目的語②はthe placeではなくthe groundの方が適切です。すると、
take itself off the ground
が元の形だと分かりますね。つまり、
飛行機が自分自身を陸地から取り去る
↓
飛行機が陸地を離れる
↓
飛行機が離陸する
という流れです。
24.Haruki Murakami's new book has really taken off.
意味:村上春樹の新刊は非常に好調だ
目的語パターン:不要型
語彙解説
今回の記事タイトルはコレ。このtake offは「①(仕事・商品・考えなどが)成功する、人気が出る ②(売り上げが)伸びる」のうちの①の意で、インフォーマル英語。Oxford Phrasal Verbs Dictionaryによれば使用頻度も比較的高いようです。
ちなみに、上では意味を2つに分けましたが、これがややこしいと感じる場合は「好調である」と覚えておけば応用できるでしょう。
意味の捉え方・覚え方
一瞬、「一体どこからこんな意味になるのか!」とビックリしそうになるかもしれませんが、過去記事を読まれたことのある方ならもうお分かりでしょう。
そうです。これは比喩表現(正確には隠喩表現あるいはメタファー)ですね。
ではどこから派生したのかと言うと、すぐ上で見た用法23「(飛行機などが)離陸する」です。
離陸するという事象には「上昇する」というイメージがありますが、このイメージを飛行機以外のものに拡大させた結果生まれたのがこの用法24でしょう。
もしこの推測が正しければ、当然「飛行機が離陸する」の意味で使っている実例が歴史上で先に存在するはずですよね。
逆に、用法24「①(仕事・商品・考えなどが)成功する、人気が出る ②(売り上げが)伸びる」が使われている例が先にあればこの推測は否定されることになりますが、実際はどうでしょうか。
試しに Google Books Ngram Viewerを使ってGoogle Booksに登録されている書籍でこれらの使用率をごくカンタンに確認してみましょう。
まず1800年以降で見てみると次のようになっていました(グラフ下の余白が多いのはviewerの仕様です)。上の2つと"plane has taken off"が用法23(「離陸する」)での例で、残り3つが用法24(「成功する、人気が出る」)での例ですが、これを見る限りでは、1900年まではどちらの用法も存在しないように見えますね。
上のグラフから少なくとも用法24が用法23よりも先に使われていないらしいことが分かりますね。見づらいので1900年以降に設定してもう一度確認。
これを見てもやはり用法23(「離陸する」)の使用例が先に存在しているらしいことが分かります。
上記の結果はあくまで書籍つまり書き言葉としての英語での使用率ですし、調べたのが単純な過去形と現在完了のパターンだけなのでデータの過不足があるでしょうが、離陸するという事象がもつ「上昇」のイメージを拡大させた結果生まれたのが用法24だという見方はそれなりに合っているのではないでしょうか。
他の用例
用法24の②の意味の実例も載せておきます。
Sales of mobile phones have really taken off in the last few years.
(出典:Oxford Phrasal Verbs Dictionary)
※私訳:「携帯電話の売り上げはここ数年、非常に好調だ」
編集後記
いかがだったでしょうか。
全7回に渡ってご紹介してきた句動詞take offですが、ここで紹介した用法の数は最終的に24個になりました(笑)
かなりのマイペースでお送りしてきましたが、句動詞を学習する上でポイントとなる考え方をそれなりに網羅できた気がするので、とりあえず良かったかなと思います。
気づいた方もいると思いますが、take off編の各用法の紹介の順番も、最初の方で取り上げた
take + 目的語① + off + 目的語② <基本形>
↓ 目的語①がoneselfになる
take + oneself + off + 目的語②
↓ oneselfと目的語②の省略
take off
という一連の流れをなるべくなぞるようにしたつもりです。というのも、できるだけ体系的な流れをお見せした方が覚えやすいかなと思ったからですが、いつものように各用法の話が細かすぎたせいで、もしかしたらあまり意味がなかったかもしれませんね・・・。
さて次回ですが・・・・・忘れないうちにtake offの用法のまとめをやっておこうかと思います。句動詞take off自体はこれで本当に最後です。他にやるとすれば、句動詞take offを使った成句でしょうか。そちらについては少し間を空けてから扱う予定です。
では、また。
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