気ままに英語あそび

「なぜこういう英語表現になるの?」納得するまで気ままに考えたい! 効率重視の時代に逆行する英語学習ブログ

MENU

I offered to kick back 15 percent to a certain government official. ってどんな意味?~kick back その2~【句動詞表現#51】

アイキャッチ

こんばんは、ねこらいたーです(= ̄ω ̄=)

 

前回の句動詞kick backの続きとなります。

 

★タイトルの英文のヒント:日本語でもほぼ同じ意味の表現があります 

 

 

 

初めての方へ

当ブログでは、句動詞で使われる前置詞と空間を表す副詞をまとめて方位詞と呼んでいます。

 

また、このブログでは、句動詞を紹介するときに、その目的語の位置を次のようにパターン化してご紹介しています。

 

①:割り込み型

動詞と方位詞を必ず離してその間に目的語を割り込ませるパターン。目的語と方位詞の位置を入れ替えることはできません

 

例)get John up 「ジョンを起こす」「ジョンを立たせる」

 

②:後置型

必ず方位詞の直後に目的語を置くパターン

 

例1)get up a ladder 「ハシゴを登る」

例2)get up to London「ロンドンに行く」

 

③:後置型

方位詞の直後に目的語を置くのが普通なパターン。パターン②ほど目的語の位置は絶対的ではないので「”後置型」としてあります。

 

例)put on weight 「体重が増える」

 

④:入れ替え可能型

文字通り方向詞と目的語を入れ替えできるパターン

 

例)put the coat on(またはon the coat) 「上着を着る」

 

⑤:不要型

いわゆる「自動詞+副詞」のパターンこのパターンでは、意味を成立させるのに的語を必要としません

 

例)break up「(関係・友情などが)終わる」

 

過去記事(【句動詞表現#2】)では、ムダに細かく考察しています。よろしければご覧ください。

 

 

kickとbackのコアイメージ / 用法1~3について

こちらについては前回の記事をご覧ください。

eigogakushu.hatenablog.jp

 

 

4.The handgun kicked back and struck the 4-year-old.

意味:拳銃が跳ねて4歳の子に直撃した

目的語パターン:不要型

 

語彙解説

このkick backは「(銃が)跳ね返る、後座する」の意。

 

意味の捉え方・覚え方

これは用法1(「・・・を蹴り返す」)または用法2(「反撃する」)からの派生でしょう。注目点は、kickの「蹴る」という文字通りの意味は薄れて「衝撃がある」という程度の意味しかなくなっている点です。それに対して、方位詞backの意味はしっかりと残っていますね。

 

このように、句動詞は文字通りの意味用法から離れれば離れるほど、その句動詞に含まれる一般動詞の本来の意味は薄れていきます。その分、方位詞の意味が強まっていくのです。これは句動詞全般にいえることですね。イメージとしては、下図のような感じですね。

句動詞の意味の内訳 イメージ

句動詞の意味的内訳のイメージ

このように、文字通りの意味用法だと一般動詞と方位詞の意味をただ加算しただけなので両者の意味的割合は半々くらいですが(例:今回の用例1)、この用法を比喩を用いて拡大解釈した結果できた派生的な意味用法だと一般動詞の意味的割合は半分以下になっていきます(例:今回の用例2~6)。なお、逆に方位詞の意味的割合が50%を切ることはまずないです。

  

ちなみに、動詞本来の意味が薄くなりやすい動詞は「軽動詞」(light verbs)とかdelexical verbsなどと呼ばれていて、特にgive, have, make, take, get, doなどの基本動詞はこの軽動詞の代表とされています。

 

このような動詞の性質を最大限に利用して人工的に作られた英語が、以前ご紹介したCharles Kay Ogden氏の"Basic English"(別名:ベーシック英語あるいはベーシック・イングリッシュ)です。この辺りの事情に関しては以下の過去記事を参照ください。

 

eigogakushu.hatenablog.jp

 

さて、話を戻します。

 

kick backについては、日本語でもそのまま「銃がキックバックする」とも言いますから、それで覚えてもいいかもしれませんね。いまいちピンとこないという方は以下の動画をご覧ください。

  

www.youtube.com

 

 

5.My fever kicked back again this morning.

意味:今朝、また熱がぶり返した

目的語パターン:不要型

 

語彙解説

 このkick backは「(病気などが)ぶり返す」の意。この用法の頻度は低めです。

 

意味の捉え方・覚え方

覚え方としては、さきの用例4のイメージである「反動」と「病気」を結びつけて

 

「治りかかった病気の反動が出る」

⇒「病気が再び悪化する」

⇒「病気がぶり返す」

 

というようなイメージを持っておけばそれで十分だと思います。

 

あえてこの意味用法の出所を探るとすれば、他動詞用法のkick自体に「(悪癖・習慣など)をやめる」という意味があることがヒントになるでしょう。

 

例1)kick the habit  「悪い習慣をやめる」(※固定表現)

例2)kick smoking habit 「タバコをやめる」 

 

というのも、「悪い習慣・中毒症状に戻る」という意味をkick backの項に載せている辞書が少ないながらも存在するからです。とりあえず確認できたのは『オーレックス英和辞典』、McGraw-Hill Dictionary of American Idioms and Phrasal Verbsの2つ。

 

なぜkick backが「悪い習慣・中毒症状に戻る」の意味を持つのかといえば、それは上記の"kick the habit"のような表現が元になっているからでしょう。つまり、

 

kick the habit + back

⇒「一度悪い習慣をやめて再び戻ってくる」

⇒「悪い習慣・中毒症状に戻る」

 

という理屈です。

 

さて、ここまでで、用法4の「(病気など)がぶり返す」との共通点が見えてきませんか?

 

そうです、両者とも「悪い状態に逆戻りする」という点で共通していますね。実際、 『オーレックス英和辞典』ではこの2つを同じ意味グループとして扱っています。

 

以上が用法4の出所に関する推測となります。覚えやすい方で覚えてみてください。

 

他の用例

軽く検索すると次のように、backの直後に他の方位詞を置く例が意外と見られます(太字・色は引用者)。むしろこちらのパターンの方が優勢かもしれません。

 

例1) 

If my fever kicked back in, I had to lay down and curl up until the meds kicked in...

※私訳: 「熱がぶり返した時は、薬が効くまで横になって丸まっていないといけなかった」

 

例2)

 ...in case his fever kicked back up.

 ※私訳「彼の熱がぶり返すといけないので・・・(以下略)」

 

これらの表現は2つの句動詞を組み合わせた言い方と思われます。すなわち例1では

 

kick back(「ぶり返す」) + kick in(「影響し始める」)

=kick back in

 

となり、例2では

 

kick back(「ぶり返す」) + kick up(「症状が出る、悪化する」)

=kick back up 

 

となっていると考えられます。ニュアンスの違いはあるかもしれませんが、熱がぶり返して症状が悪化するという点は共通した意味として含まれていますね。

 

 

6.I offered to kick back 15 percent to a certain government official.

意味:私はある官僚に15%のリベートを持ちかけた

目的語パターン:入れ替え可能型 

 

語彙解説

これが記事タイトル。このkick backは「(利益など)をリベート[手数料]として割り戻す、キックバックする」の意で、前回の用例3「つくろぐ、リラックスする」と並んでこの句動詞の代表的用法です。

 

また、これはインフォーマルなアメリカ英語で、悪い意味で用いられることが多い表現でもあります。なお、誰に対してのリベート[手数料]なのかを示すために「to+人」が後ろに置かれることがあります。

 

意味の捉え方・覚え方

覚えるにあたっては、日本語でもキックバックする」と言うので、このまま覚えてしまえば特に問題はないでしょう。

 

なぜkick backが悪い意味になるのか少し考えてみると、意外にも用法1の「・・・を蹴り返す」の意味をほぼそのまま使っているのかもしれません。つまり、

 

交渉のテーブルの下で利益を蹴り返している

 

ということなのではないでしょうか。こう考えると、他人に見えないよう秘密裏にテーブルの下でやりとりしているイメージそのままですよね。日本語でいう「袖の下」のイメージとも重なるところがあります。

 

実際、数は少ないですが以下のような文がネット上で出てきます(太字・色は引用者)。

 

例1)

Someone is getting a kick back under the table.

※kick backは名詞

 

例2)

if you purchased their equipment, you got a kick back under the table in the form of cash. 

※kick backは名詞

 

例3)

Even hospitals and pharmacies and other businesses kick back under the table to get the customers referred over to them.

※kick backは句動詞

 

このような例を見る限り、kick backとunder the tableとの間に関連性があるという推測は、少なくとも全くの見当はずれではないように思います。

 

他の用例

この意味には自動詞用法もあります。

 

例)I offered to kick back to a certain government official.

「私はある官僚にリベート話を持ちかけた」

 

 

編集後記

いかがだったでしょうか。

 

当たり前のことなのしれませんが、日本語と英語の表現を比べたとき、その中に含まれる比喩的発想の類似性に私はびっくりすることがよくあります。言語が違うのに発想が同じというのは何とも不思議な気分です。

 

今回取り上げたkick backも少しそんな気分にさせてくれたのですが、皆さんはどうでしようか?

 

では、今日はここまでです。

 

 

 ↓皆様の応援が励みになります。もしよろしければクリックをお願いいたします

にほんブログ村 英語ブログへ