John looked the papers over. ってどんな意味?~look over その3~【句動詞表現#44】
どうも、ねこらいたーです(= ̄ω ̄=)
前回から間が空いてしまいましたが今回でlook over編ラストとなります。
句動詞の意味自体はそれほど難しくはないのですが、考えるべき点が結構ある表現です。かなり長いので、適当に流し読みしていただければ幸いです。
では始めます。
- 初めての方へ
- lookとoverのコアイメージ / 例文1~2について
- 例文3~5について
- 6.I looked over the house before signing the contract.
- 7.John looked the papers over.
- 例文6と例文7との違い
- 編集後記
初めての方へ
当ブログでは、いわゆる前置詞と空間を表す副詞をまとめて方位詞と呼んでいます。
また、このブログでは、句動詞を紹介するときに、その目的語の位置を次のようにパターン化してご紹介しています。
①:割り込み型
動詞と方位詞を必ず離してその間に目的語を割り込ませるパターン。目的語と方位詞の位置を入れ替えることはできません。
例)get John up 「ジョンを起こす」「ジョンを立たせる」
②:後置型
必ず方位詞の直後に目的語を置くパターン
例1)get up a ladder 「ハシゴを登る」
例2)get up to London「ロンドンに行く」
③:準後置型
方位詞の直後に目的語を置くのが普通なパターン。パターン②ほど目的語の位置は絶対的ではないので「”準”後置型」としてあります。
例)put on weight 「体重が増える」
④:入れ替え可能型
文字通り方向詞と目的語を入れ替えできるパターン
例)put the coat on(またはon the coat) 「上着を着る」
⑤:不要型
いわゆる「自動詞+副詞」のパターン。このパターンでは、意味を成立させるのに目的語を必要としません。
例)break up「(関係・友情などが)終わる」
【句動詞表現#2】では、ムダに細かく考察しています。より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
lookとoverのコアイメージ / 例文1~2について
前々回の記事をご覧ください。
例文3~5について
前回の記事をご覧ください。
6.I looked over the house before signing the contract.
意味:契約書にサインする前にその家を内見した
目的語パターン:後置型
語彙解説
このlook overは「(土地・家など)を下検分する」の意。
意味の捉え方・覚え方
これは、例文2.で扱った「・・・を見渡す」の意味用法からの派生です。
まず例文2は次のようになっていました。
I looked over the hall filled with around 100 people.
「私は、ぎっしり100人ほどいる会場を見渡した」
この場合、見渡すといっても、何か明確な意図を持っているというよりは「何となく」そうしているというニュアンスですよね。
そしてここに「調べる」「確かめる」という明確な意図を加えたのが例文6.の意味用法といえます。つまり、
見渡して何かを調べる
⇒下検分する
ということですね。
例文6.の場合でいえば内見ですから、日当たりはどうか・老朽化はしていないか・周囲の住宅の様子はどうかなどチェックしておきたいはずです。ぼーっと内見する人は少ないのではないでしょうか。
このように、「何かの全体を意識的に見る」というのが例文2.との違いです。
他の用例
この意味には自動詞用法もあります。
例)I looked over before signing the contract.
「契約書にサインする前に下見した」
これもまた、overの後ろにある目的語が省略された結果として生まれた用法と捉えればいいでしょう。
7.John looked the papers over.
意味:ジョンは書類をザッとチェックした
目的語パターン:入れ替え可能型
語彙解説
このlook overは「①(書類など)を調べる ②(人・身体の部位)を診察する」の意。
意味の捉え方・覚え方①~例文3.の用法との関係性とは?~
これは他動詞用法のlook overなので、いつものように目的語と方位詞overの間に主語述語関係が成立していると考えてみます。
・・・がしかし、意味から考えて、the papersが何かを越えるわけでも、あるいは終わるわけでもなく、主語述語関係が成立していると考えるのは無理がありそうです。
ではどうするか。
ここでヒントになるのが前回の例文3.です。
I need to look over my notes before the test.
「テスト前に、授業のメモをざっと見ておかなくちゃ」
このlook over...は「・・・にざっと目を通す、ざっと読む」の意でした。
ここで、
「え、この2つの用法ほぼ同じじゃない? 何が違うの?」
という声が聞こえてきそうですね。実際、この点は気になります。
というのも、明らかにこの両者は関係しているように見えるからです。この点に関して順を追って説明しますと次のようになります。
まず例文3.の
I need to look over my notes before the test.
では、主語" I "の意識(あるいは視線)がmy notesをoverする、つまりmy notes全体を覆うようにしてlookするわけですから、
文の主語=overの意味上の主語
となっていますよね(この考え方については意外と知らない句動詞の事実って?(3)にて詳しく説明しました)。
他方、この見出し例文7.もoverの位置は入れ替え可能なので
John looked over the papers.
とすることができますが、こちらも、主語"John"の意識(あるいは視線)がthe papersをoverする、つまりthe papers全体を覆うようにしてlookすると考えることが可能です。したがって例文7.も
文の主語=overの意味上の主語
という関係になっていると見ることもできるわけです。
以上のような共通点に加え、句動詞における比喩的な意味は原則的には文字通りの意味用法から派生するという傾向も考慮しますと、例文7.の他動詞用法は例文3.のlook overからの派生だという推測が立てられます。
ここまでが、例文3.と7.の用法が明らかに関係しているといえる理由です。
なお、この両者の用法が関係しているというのは、例文3.の 「・・・にざっと目を通す」という意味用法が一部の辞書(ウィズダム、Eゲイト、プログレッシブなど(※))では他動詞用法のlook over(つまり例文7.の用法)の一部として扱われているという事実からも推測できます。
※多くの英英辞典では「look+前置詞over」の用法を載せていないが、一方で他動詞用法のlook overにこの意味を含ませているのかどうか不明瞭なため除外。また同様な状況の英和辞典(例:オーレックス)も同じく除外。
意味の捉え方・覚え方②~用法3.と用法7.の違いとは?~
今、用法3.が用法7.のもとであるという話をしましたが、では両者の違いはどこにあるのでしょうか?
これに関してはOxford Phrasal Verbs Dictionaryが一つのヒントになります。本書によると、用例3.の「自動詞look+前置詞over+目的語」の意味は次のようになっています。
to read sth quickly
(出典:Oxford Phrasal Verbs Dictionary)
※sthはsomethingの略
一方、用例7.の「他動詞look+目的語+副詞over」(または「他動詞look+副詞over+目的語」)の意味は以下です。
to check or examine sb/sth to see how good, big, etc. they are/it is
(出典:Oxford Phrasal Verbs Dictionary)
※sbはsomebodyの略
これらから分かるのは、用例7.の「他動詞look+目的語+副詞over」(または「他動詞look+副詞over+目的語」)の場合、良いのかどうか・大きいかどうかなどハッキリとした目的意識を持って見ているということです。一方、このような明確な目的意識は用例3.の「自動詞look+前置詞over+目的語」にはないことが分かりますね。
この点、用法7の②に挙げた「診察する」という意味用法では、目的意識があるというニュアンスはよりハッキリと読み取ることができると思われます。
さて、ここまでをまとめると両者の使い分けは次のようになるでしょう。
◎パターン1
特に何の目的意識も持たずに何となく全体に目を通す
⇒ 「自動詞look+前置詞over+目的語」(例文3)
◎パターン2
対象が良いものかどうかなどを見極めるという目的意識を持って全体に目を通す
⇒「他動詞look+目的語+副詞over」(例文7)
または
「他動詞look+副詞over+目的語」
ただし、「自動詞look+前置詞over+目的語」と「他動詞look+副詞over+目的語」は形の上では同じになりますし、目的意識があるかどうかというニュアンスの違いも微妙といえば微妙です。したがって、これら2つの用法は意味の面でも形の面でも僅かな差しかないともいえます。
この点で、例文3.の 「・・・にざっと目を通す」という意味用法が一部の辞書では他動詞用法のlook over(つまり例文7.の用法)の一部として扱われているという事実は、納得できそうですね。
このような点も考慮すると、結局のところ、
目的意識を持ってみているかどうかにかかわらず「他動詞look+目的語+副詞over」または「他動詞look+副詞over+目的語」を使うのが無難
という結論になりそうです。
他の用法
この意味にも自動詞用法があります。これも目的語が省かれたと考えればOKです。
例)John looked over but found nothing wrong.
「ジョンは書類にザッと目を通したが、おかしな所はなかった」
例文6と例文7との違い
最後に、軽い補足をして終わりにしたいと思います。
上記の説明を見ると、どちらの例文でも「目的意識を持って見る」という点が共通しています。ではなぜ例文6は例文7のような「他動詞look+目的語+副詞over」という形をとれないのでしょうか?
これは目的語にくる名詞の種類によるものでしょう。
というのは、用法6は「下検分する」という意味なので、その目的語には多くの場合は「場所を示す語」がきます。その一方、用法7は「書類などの文書類」つまり「ものを示す語」を目的語にしますよね。
一般に、場所に対して何か動作をする場合、その場所自体を作ったり破壊したり探したりする以外では、動作の対象として意識することはあまりありません。
これは、英語において動作の対象として意識されるのは、
ある動作をすることでその目的語にあたるものが変形または変質するなどのハッキリとした影響を受けると見なされる場合である
という事情によります。
この意味で「下検分する」という意味用法では、目的語になる土地や家などに明確な影響を与えているとは認識されないのでしょう。
こういった事情から、例文6が「他動詞look+目的語+副詞over」という形をとれない理由と推測できます。
実際、この「下検分する」を用法7の他動詞用法のlookに含めているのが確認できるのは『ウィズダム英和辞典(第2版)』くらいしかありませんでした。
編集後記
最後まで読んでいただきありがとうございます。わずかでも役に立った情報あれば幸いですが、いかがだったでしょうか・・・(不安)
余りにも書きたいことが多かったので、どこを削るか数日の間試行錯誤してました・・・。おそらく3000字ほど削ったと思います。この部分は、後日の記事にて扱おうかと考え中です。
今回は結構疲れたので、次は軽めの表現を扱う予定でいます(笑)
では、また。
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