意外と知らない句動詞の事実って?(3)【句動詞表現#40】【英語学習のヒント#5】
皆さん、こんばんは。
最近ブログの下書きが消えそうになってドキッとしたねこらいたーです(=°ω°= )ドキドキ
今回は不変化詞の見分け方についてがメインです。
では始めていきます。
(なお、各節の数字は(1)からの通し番号です)
- ~前回のまとめ~
- 7.前回の6節の振り返り
- 8.目的語が必要な不変化詞の見分け方はある?②
- 9.目的語が必要な不変化詞の見分け方はある?③
- 10.前節のように不変化詞を見分けるメリットは? いつ使うの?
- 今回のまとめ
- 編集後記
~前回のまとめ~
◎前置詞と副詞の両用法がある語に対して「これは前置詞なので直後に名詞を置きます」のように説明するのは、何かを説明をしているようで実際には何も説明できてない
◎後ろに必ず名詞を置く語は「前置詞」と分類され、逆に、必ずしも直後に名詞を置かなくてもよい語は「副詞」と分類される。このように前置詞・副詞という区別は結果として分かるものでしかない
◎このような点を考慮したのが「不変化詞(=パーティクル、particle)」などの用語。これは句動詞で使われる前置詞と副詞をひとまとめにしたもの。
◎不変化詞が2つピッタリとくっ付いた形で文中にある場合は、基本的に、
「直後に目的語を必要としない不変化詞」+「直後に目的語を必要とする不変化詞」
という構造になる。ただし、これらの位置は固定されていることに注意
※詳しくは以下の記事をご覧ください
7.前回の6節の振り返り
話があっちこっちに飛んでいる気がするので、本題に入る前にここまでの流れを簡単に振り返っておきたいと思います。
まず、前回記事の5節では以下のような定義ができることをご紹介しました。
◎直後に目的語を必要とする不変化詞を品詞分類すると結果的に「前置詞」になる
◎直後に目的語を必要としない不変化詞を品詞分類すると結果的に「副詞」になる
つまり、ある不変化詞が直後に目的語を必要とするかどうかが分かれば、結果的に前置詞か副詞か分かるということになりますよね。そこで気になるのが、
「では目的語を必要とするかどうかの基準はどこにあるのか?」
ということ。この基準を探るために、6節では以下のa)~c)を比較してみようという話になったのでした。
a)He got over the river.
「彼は川を渡った」
b)He got over to the house.
「彼はその家に到着した」
c)He couldn't get over the message.
「彼はそのメッセージの意味を理解させることができなかった」
その際に注目したのは、overの位置を他の位置に移動できるのは例文c)の場合のみという点です。つまり、c)だけが
He couldn't get the message over.
のように書くこともできるわけですね。
そして、この3つのうち例文b)だけ考察して前回は終わってしまいましたが、その中で分かったことは次のような点です。
b)のoverがc)のoverのように位置を移動できないのは、例文b)がもともと"He got over the river to the forest."(「彼は川を渡って森に着いた」)というような形をとっており、overがgetとtoの間にあることにキチンとした意味があった。だからこそget over toという語順になる
こういった事象から例文b)のoverは例文c)のoverのように移動できないということでした。
8.目的語が必要な不変化詞の見分け方はある?②
お待たせしました。本題に入ります。
例文b)はとりあえず終わったので、次に例文a)を見ていきましょう。
a)He got over the river.
「彼は川を渡った」
c)He couldn't get over the message.
「彼はそのメッセージの意味を理解させることができなかった」
例文a)のoverも例文c)のように移動することはできないのですが、その差は何なのでしょうか?
実は、「不変化詞の意味上の主語は何か?」という観点で両者のパターンを区別できる場合が意外とあるんです。順を追って説明しましょう。
まず、ここでの不変化詞は「over」ですよね。ではoverする意味上の主語は、a)とc)においてそれぞれ何でしょうか?
a)は「川を渡る」つまり「川をoverする」わけですから 、overの意味上の主語は「He」ということになります。
一方、c)はどうでしょうか?一見するとa)と同じ位置にoverがあるので、overの意味上の主語は「He」のように見えますが、落ちついて考えてみましょう。
もしoverの意味上の主語を「He」とした場合、heがmessageをoverするということになりますが、その解釈では日本語訳との整合性がなさすぎる気がしませんか?
実はこの例文c)には省略されている部分があるんです。それは「メッセージを理解させる相手」。仮にこの相手をBobと設定して、例文c)を省略せずに書くと次のようになります。
c-1)He couldn't get over the message to Bob.
「彼はそのメッセージの意味をボブに理解させることができなかった」
また、始めに言いましたように例文c)だけがoverを目的語の後ろに移動できるので
c-2)He couldn't get the message over to Bob.
と書くこともできます。
さらに、実は例文b)のover同様に、この例文でもoverの後ろには元々、目的語が存在していました。それは、例えば次のd)と同じ形です。
d)He got his baggage over the river to the forest.
「彼は自分の荷物を川向うの森まで運んだ[運ばせた]」
このような文字通りの意味から比喩的に派生したのが、例文c)で使われている「~を(・・・に)理解させる」という意味です。この比喩的意味に関してはget acrossとほぼ同じなので、以下の記事が参考になるかと思います。よければご覧ください。
なお、例文c)のoverとtoの間に何もないのは、意味の比喩化に伴って「どこを横切ったのか」あるいは「どこを渡ったのか」という情報が必要なくなったからという推測ができるでしょう。
さて、問題。
例文d)において川をoverしたのは「He」でしょうか?それとも「his baggage」でしょうか?
「いや、『He』が自分で運んだのなら、どちらも川をoverしてるんじゃないの?」
というツッコミが来そうですが、確かに自分で運んだ場合はそうでしょう。しかし、上記の例文d)は、他人あるいは動物に運ばせた場合にも使えます。ということは、川をoverするものとして意識されているのはあくまで「his baggage」の方だと分かりますね。
これと同じように例文c)も考えてみてください。すると、c)のoverの意味上の主語はthe messageということになります。
9.目的語が必要な不変化詞の見分け方はある?③
さて、8節で分かったことを整理しましょう。まずa)は、
図のように、 文の主語=overの意味上の主語 となっていました。
一方、c)は
図のように、 動詞の目的語= overの意味上の主語 となっていました。
ここから分かるのは、副詞用法も前置詞用法もある不変化詞に対しては
(1)動詞の目的語が不変化詞の意味上の主語になっている場合には、その不変化詞は目的語を必要としない。(すなわち副詞)
(2)文の主語が不変化詞の意味上の主語になっている場合には、その不変化詞は目的語を必要とする。(すなわち前置詞)
という傾向がありそうだということです。実際この考え方で、ある程度は見分けることができます。
あと注意すべきは、傾向1に当てはまる場合であっても下の例のように、不変化詞を名詞が前後から挟んでいる場合には、その不変化詞は前置詞用法という点です。したがって、その不変化詞だけを別の場所に移動させることはできません。
例)Could you help me get the bookshelf down the stairs?
「本棚を階段から降ろすの手伝ってくれませんか?」
ところで、副詞用法も前置詞用法もある不変化詞かどうかの判別は、意外と知らない句動詞の事実って?(1)【句動詞表現#38】で挙げた「前置詞用法・副詞用法のどちら一方しかない不変化詞」以外と考えておけばいいでしょう。この中の多くはよく知られている語なので感覚的に区別がつくでしょうから、知らない不変化詞に遭遇したら覚える程度で十分かと思います。
<副詞用法しかない不変化詞>
aback abroad ahead apart away back forth forward(s) overboard together
<前置詞用法しかない不変化詞>
against among at beneath beside for from into of onto than toward with within without
10.前節のように不変化詞を見分けるメリットは? いつ使うの?
そもそもこのような回りくどい説明をしたのは、句動詞を学習している人の中で、句動詞そのものの意味は覚えたのに正しく使えていない方をちらほら見かけるからです(私も含みます(笑))。そして私が見る限りでは、その原因の一つが、どういう場合に不変化詞が目的語の前にあったり後ろにあったりするのか上手く掴めていない点にあるように感じたため、今回ご紹介したしだいです。
ですので、9節で示した基準(というより傾向?)に関して、私が想定している使い方は次の条件に当てはまる場合です。
A.句動詞の意味を既に知っている
B.不変化詞の置き場所がよく分からない
C.不変化詞をどこに置くかでなぜ意味が変わるのかよく分からない
このように、あくまで既に知っている知識を整理するためのヒントとして考えたものなので、意味も知らないような全く初見の句動詞に関しては使えないと思います。こちらを期待して読んでいただいた方には申し訳ありません。
また、9節の基準はかなり緩いものですが基本的な方向性は間違っていないと考えてますので、より正確な考え方などは今後の句動詞解説で示していくつもりでいます。
今回のまとめ
◎副詞用法も前置詞用法もある不変化詞に対しては以下の傾向がある
(1)動詞の目的語が不変化詞の意味上の主語になっている場合には、その不変化詞は目的語を必要としない。(すなわち副詞)
(2)文の主語が不変化詞の意味上の主語になっている場合には、その不変化詞は目的語を必要とする。(すなわち前置詞)
◎ただし、傾向1に当てはまる場合であっても、不変化詞を名詞が前後から挟んでいる場合には、その不変化詞は前置詞用法。したがって、その不変化詞だけを別の場所に移動させることは不可。
編集後記
最後まで読んで下さった方、ありがとうございます。またいつものように長ったらしくなってしまいました・・・。
はてな界隈は英語のレベルが高い方々が多い印象なので、今回の内容はあまり(というより殆ど)役に立たなかったかもしれません。
ただ、一部の専門書を除けばこの程度の話さえ参考書に載っている場合は少ないので、結局自分で考えるしかないわけですが、何とかしてほしいですね・・・(汗)。
日本人が実用英語に弱い大きな原因の1つが、この句動詞分野を学校の授業でほとんど扱わずに、昔でいう「英頻」などの副教材を配って後は生徒に丸投げしてきた点にあると密かに思ってますが、この分野関連の参考書が極端に少ないのも、もしかすると、そういった学校授業のスタイルの影響かもしれません。
では、また。
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