The pilots were talked down by the Ground Controllers. ってどんな意味?~talk down その1~【句動詞表現#33】
どうも、ねこらいたーです(= ̄ω ̄=)
2回にわたってtalk downについて見ていきます。
頻出の表現というわけではありませんが、なかなか面白い意味をもつ句動詞です。
では始めます。
- 初めての方へ
- talkとdownのコアイメージは?
- 1.Two cops appear to be trying to talk the suicidal man down from the bridge, according to a witness.
- 2.The pilots were talked down by the Ground Controllers.
- 3.She talked him down, telling jokes to ease the tension.
初めての方へ
当ブログでは、いわゆる前置詞と空間を表す副詞をまとめて方位詞と呼んでいます。
また、このブログでは、句動詞を紹介するときに、その目的語の位置を次のようにパターン化してご紹介しています。
①:割り込み型
動詞と方位詞を必ず離してその間に目的語を割り込ませるパターン。目的語と方位詞の位置を入れ替えることはできません。
例)get John up 「ジョンを起こす」「ジョンを立たせる」
②:後置型
必ず方位詞の直後に目的語を置くパターン
例1)get up a ladder 「ハシゴを登る」
例2)get up to London「ロンドンに行く」
③:準後置型
方位詞の直後に目的語を置くのが普通なパターン。パターン②ほど目的語の位置は絶対的ではないので「”準”後置型」としてあります。
例)put on weight 「体重が増える」
④:入れ替え可能型
文字通り方向詞と目的語を入れ替えできるパターン
例)put the coat on(またはon the coat) 「上着を着る」
⑤:不要型
いわゆる「自動詞+副詞」のパターン。このパターンでは、意味を成立させるのに目的語を必要としません。
例)break up「(関係・友情などが)終わる」
【句動詞表現#2】では、ムダに細かく考察しています。より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
talkとdownのコアイメージは?
talkのコアイメージ
talkのコアイメージは「双方向に話をする」です。
このコアイメージと対照的なのはspeakで、こちらは「一方向に話をする」というイメージがあります。このイメージは、speakが「演説する」の意味を持つことを思い出してもらえれば分かりやすいでしょう。
downのコアイメージ
downのコアイメージは文字通り「下降」です。このイメージは下への運動・移動という物理的な下降だけでなく、時代が下ることや気分が落ち込むことなどの時間的・精神的な下降も表します。
1.Two cops appear to be trying to talk the suicidal man down from the bridge, according to a witness.
意味:目撃証言によると、現在、飛び降りようとしている男性は警官2人によって説得中のようだ
目的語パターン:入れ替え可能型
語彙解説
このtalk downは「(人)を説得して(ある場所から)降りさせる」の意。見出し例文のように、どこから降ろすのかに関しての表現が「from+場所」として現れることがあります。
また、この意味用法では目的語の位置は入れ替え可能型なので、見出しの例文は”talk down the suicidal man from the bridge”とすることもできます。
suicidal manは「自殺志願者;自殺しようとしている人」のこと。
意味の捉え方・覚え方
いつも言っていることですが、目的語パターンが入れ換え可能型であっても、下図のように方位詞を後ろにまわしてSVOCの第5文型として捉える方が分かりやすくなります。
その上で、「話した結果、飛び降りようとする男性が橋から降りる」というように、OとCの部分はtalkという行為の結果を表していると考えます。このときOとCの間には主語述語関係が成立していることに注意です。
結局のところ、「話した結果、人あるいは物が下がる[降りる]」という文字通りの意味が句動詞talk downの本質と言えます。意味用法ごとに「話した結果、下がっているものは何か」を確認すると、このことが実感できるのではないでしょうか。
他の用例
見出し例文ではfromのあとは場所を示す語が置かれていますが、以下の例ではfromのあとに動名詞を置いています。
例)They talked the man down from committing suicide.
「彼らは、説得によりその男性の自殺を防いだ」
これは、学校英語でお馴染みのtalk somebody out of doing(「(人)を説得して~するのをやめさせる」)に近い表現として考えておけばいいでしょう。実際、用例は少ないものの、以下のように自殺とは関係のない文脈でも使われています。
"It's all about buying time in most situations, trying to calm people down and talk them down from doing something they'll regret," she says.
出典:"Could violence interrupters work in London?" BBC London News 22 Sep. 2018
注1)シカゴのViolence Interrupters(訳すなら「暴力の仲裁およびその撲滅を目的とする市民団体」のような感じでしょうか...)がロンドンでも機能するかという内容の記事で、引用部はその団体に所属する元ギャングの女性へのインタビュー。violence interrupterのメンバーは実際にギャング同士の抗争に対して仲裁に入るなどするため、かなりの危険を伴うとのこと。そのため、そのような危険な現場に慣れている元ギャングの人々が積極的に起用されているようです。
注2)私訳:「大体は、時間を稼ぐこと、それに尽きますね。当事者をなだめたり説得したりして、後で後悔するようなことをやめさせるのよ」と彼女は言う
注3)出典は以下のサイト
2.The pilots were talked down by the Ground Controllers.
目的語パターン:入れ替え可能型
※例文の出典:Oxford Phrasal Verbs Dictionary
語彙解説
このtalk downは「(パイロット・飛行機など)に無線を使って着陸誘導をする」の意。
意味の捉え方・覚え方
これもSVOCの第5文型で捉えるのですが、受動態のままでは分かりづらいので能動態に直すと、
The Ground Controllers talked the pilots down.
となります。
ところで、着陸誘導の場面ですから、どこに下りるかは状況から分かりますね。すなわち、「滑走路」に下りるわけです。したがって、
The Ground Controllers talked the pilots down onto the runway.
のような語句が隠されていると考えるべきでしょう。
以上のことを踏まえた上で構造を図示すると次のようになります。
「話した結果、パイロットが(滑走路に)下りる」というように、これもOとCの部分がtalkという行為の結果を表します。またOとCの間には主語述語関係が成立している点も見出し例文1と同じ。
なお、down onto the runwayという解釈が成り立つのは、見出し例文の"the pilots"が飛行機と同一視されているためでしょう。というのは、地上管制官と無線でやりとりをするのはパイロットという人間ですが、実際に滑走路に下りるのは飛行機だからです。
実際、以下の例のように目的語が人ではなく飛行機になる場合もあります。
The tower controller would have to talk the plane down, but....(以下略)
※出典は以下のサイト
3.She talked him down, telling jokes to ease the tension.
意味:彼女は、緊張を解すために冗談を言ったりして彼を落ち着かせた
目的語パターン:入れ替え可能型
※例文の出典:Macmillan English Dictionary Online
語彙解説
このtalk downは「(人)に話をすることで、気分を落ち着かせる」という意のくだけた表現。
特に、違法ドラッグを服用して情緒不安定になっている人を落ち着かせるときに用いられるようです。この点はスラングに詳しいUrban Dictionaryでも指摘されているので、あまり良い印象のない言い方です。
また、少し調べると、どうやら日本語でも全く同じ意味で「トークダウン」と言うようです。しかもこの「トークダウン」を「トーンダウン」の意味で使っている人がいるらしいです。この2つは全く意味が違うので気を付けましょう。
意味の捉え方・覚え方
これも第5文型として考えると分かりやすいです。
「話した結果、彼(の精神状態)が下がる」というように、OとCの部分がtalkという行為の結果を表します。彼の精神状態が下がるというのはつまり、”落ち着く”ということ。
OとCの間に主語述語関係が成立している点は見出し例文1や2と同じ。
さて、いかがだったでしょうか。
意味が分かれば、なるほどと思えるような表現だったと思います。
次回に続きます。
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