The rot really set in after I broke up with Jessica. ってどんな意味?【句動詞表現#23】
どうも、ねこらいたーです(= ̄ω ̄=)
今回は句動詞set inがテーマ。
マイナーな表現のようにも見えますが、実は頻出表現です。
では始めましょう。
- 初めての方へ
- setとinのコアイメージは?
- 1.How many stones are set in the ring?
- 2.We've got to leave before winter sets in.
- 3.The rot really set in after I broke up with Jessica.
- 4.The tyde is setting in.
初めての方へ
当ブログでは、いわゆる前置詞と空間を表す副詞をまとめて方位詞と呼んでいます。
また、このブログでは、句動詞を紹介するときに、その目的語の位置を次のようにパターン化してご紹介しています。
①:割り込み型
動詞と方位詞を必ず離してその間に目的語を割り込ませるパターン。目的語と方位詞の位置を入れ替えることはできません。
例)get John up 「ジョンを起こす」「ジョンを立たせる」
②:後置型
必ず方位詞の直後に目的語を置くパターン
例1)get up a ladder 「ハシゴを登る」
例2)get up to London「ロンドンに行く」
③:準後置型
方位詞の直後に目的語を置くのが普通なパターン。パターン②ほど目的語の位置は絶対的ではないので「”準”後置型」としてあります。
例)put on weight 「体重が増える」
④:入れ替え可能型
文字通り方向詞と目的語を入れ替えできるパターン
例)put the coat on(またはon the coat) 「上着を着る」
⑤:不要型
いわゆる「自動詞+副詞」のパターン。このパターンでは、意味を成立させるのに目的語を必要としません。
例)break up「(関係・友情などが)終わる」
【句動詞表現#2】では、ムダに細かく考察しています。より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
setとinのコアイメージは?
setのコアイメージ
setのコアイメージは、「あらかじめ定められた位置に置く」です。putも置くという意味ですが、setとは異なりputには定位置に置くというニュアンスはありません。つまり、配置する場所に関してはどこでも構わないということ。
setのこのコアイメージからは「何となくAという場所に置く」のではないということがよく分かります。つまり、Aという場所に置くにはキチンとした根拠が存在するのです。その根拠というのは、規則であったり、マナーであったり、明確な意図であったりと様々ですが、どれもあらかじめ定められているものという点では共通しています。
例えば、set the dish on the tableであれば、マナーによって皿の配置場所はあらかじめ決まっていますし、set a broken bone(「接骨する」)であれば、折れて通常の位置からズレてしまった骨を元の決められた位置に戻すことになります。
また、「物理的な場所に置く」という意味から拡張されて「ある状況・状態に置く」という比喩的意味になる点はputと共通ですので注目しておきましょう。
inのコアイメージ
inのコアイメージは「ある空間の中に位置している」です。元々は上図のように物理的な入れ物の中に位置するという意味ですが、そこから拡大解釈されて「ある状態の中に位置している」つまり「ある状態になっている」という意味も持つようになりました(以下の例を参照)。
in the box(物理的空間)
in 1998(時間的空間)
in silence(状況的空間)
1.How many stones are set in the ring?
意味:その指輪には宝石がいくつ埋め込まれていますか?
目的語パターン:割り込み型
このset~in....は「~を・・・にはめ込む、埋め込む、組み込む;挿入する」の意。この意味用法は通例、受動態で用いられますが、能動態であれば、"how to set a diamond in a ring"のようになります。
埋め込むということは、あらかじめ窪みが作られていて、そこに何か物を位置させるということにほかなりません。したがって、これはさきのsetの「あらかじめ定められた位置に置く」というコアイメージそのものですね。
2.We've got to leave before winter sets in.
意味:冬が来る前に出発しなければならない
目的語パターン:不要型
このset inは「(悪天候・病気の流行など)が始まる;(不愉快な感情)が沸き起こる」の意。「've got to do」は"have got to do"の省略形で、意味はhave to doとほぼ同じ。なお、「've」さえも消失して"got to do"という形になる場合があります。
この意味用法の訳し方は何通りもできますが、その本質は「好ましくないことが始まる」という点にあります。また、「その好ましくないことがしばらくは続きそうだ」というニュアンスも含まれているようです。
さて、問題はコアイメージとのつながりです。setとinのコアイメージだけではなぜこの意味用法が出てきたのかよく分かりませんよね。しかし、これも当ブログでいつもやっているような方法をとればそれほど難しくはありません。
まず、このsetですが、『ジーニアス英和大辞典』によれば元々は他動詞用法だけだったようで、のちの時代に自動詞用法が派生したようです。
このように他動詞用法のあとに自動詞用法が出現するパターンの場合は、再帰代名詞やよく使われる目的語を省略する形で自動詞用法が生まれるという流れが多いです。
有名な例でいえば、自動詞用法のapply to~(「~に適応する」)がこれに該当します。つまり、元々は他動詞用法のapply oneself to~(「自分自身を~に適応させる」)であって、そのoneselfが省略されるかたちで自動詞用法が生まれたのです。
「本当にそんなことが起きたの?」と思われるかもしれませんが、こういった現象は学問的な裏付けもキチンとされていますのでご安心を。
そのあたりの事情をごくごく簡単にご紹介しておきますと、まずapply oneself to~のような動詞を「再帰動詞」といいますが、この再帰動詞が英語史上のある時期にoneselfをなくす形で大量の自動詞が生まれたとされています(ただし、なぜそれが起こったかについては明確な答えは出ていないようです)。
ちなみに、kill oneself(「自殺する」)やenjoy oneself(「楽しく過ごす」)やamuse oneself with~(「~をして楽しむ」)といったように、現代の英語にまだ残っているものもありますね。その一方で、英語の兄弟言語であるドイツ語や、ほかにもフランス語などでは現在もこの再帰動詞は頻繁に使われているようです。
さて、話を戻します。
以上の話からset inも上記の再帰動詞として使われていたということは分かりました。つまり、set inの以前の形はset oneself inだったというわけです。
では、ここからどうやって「始まる」という意味が出てくるのでしょうか?
これに関しては、set ~ in (the) motion([「(機械など)を動かし始める;(物事)を始める」)という成句を知っていればカンタンです。
そうです、皆さんお察しの通り、この成句の目的語がoneselfになれば実質的に自動詞用法になるわけです。つまり、set oneself in (the) motionという形。
そして、ここからoneselfと(the) motionが省略されれば、set inになりますよね。要するに、set inの元々の形はset oneself in (the) motionだったというわけです。
したがって、このset inの意味用法は次のような流れの中で出現したものといえます。
「自分自身を動いている状態に置く」⇒「自分自身を動かす」⇒「動く」⇒「始まる」
これで、スッキリしましたね^^
3.The rot really set in after I broke up with Jessica.
意味:何もかもが本当の意味でうまくいかなくなったのはジェシカと別れた後だった
目的語パターン:不要型
これが記事タイトル。この表現は決まり文句で、元の形は「The rot[A rot, Rot] sets in.」。その意味は「状況が悪化し始める」です。
rotは「腐食すること;衰退すること」を意味する名詞で、set inは上記の見出し例文2.の意味用法で用いられています。つまり、ゴリゴリの直訳ですと「衰退が始まる」となりますね。
したがって、「衰退が始まる」⇒「状況が悪化し始める」という流れで出現した意味だと分かります。
※追記
『ジーニアス英和大辞典』で確認すると、「(スポーツ・事業などでの)突然起こる続けざまの失敗」という意味が載っているので、この意味でとった方が正確かもしれません。ただ、この意味も元は「腐食すること;衰退すること」という意味から派生したものであることは明白ではあります。
4.The tyde is setting in.
意味:潮が満ちてきている
目的語パターン:不要型
このset inは「(風など)が陸へ向かって吹き始める、(潮など)が陸へ向かって流れ始める」の意。
コアイメージとのつながりですが、これは上記の見出し例文2.のようにいくつかの語句が省略された結果できた意味用法と考えれば分かりやすいです。
つまり、この場合には、
set oneself in the direction of the land
という形だったのではないでしょうか。ここから 「陸の方向に向けて自分自身を置く」⇒「陸に自分自身を向かわせる」⇒「陸に向かう」というような流れでこの意味用法が出現したと考えればいいと思います。
さて、いかがだったでしょうか。
このset inは一見すると字面通りの意味と実際の意味とでかなりギャップがあって戸惑いますが、よーく考えてみると割とすんなり理解できましたね
皆さんのモヤモヤが少しでも晴れたようでしたら幸いです。
ではまた。
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